9月23日、秋分の日。

東京・池袋の東京芸術劇場のコンサートホールは、約1300人の観客で、ほぼ埋め尽くされている。

東京都交響楽団と7歳から24歳の80人の音楽家の“たまご”たちが一緒に演奏する「ティーンズと都響のジョイントコンサート」に抽選で招待された人たちだ。

東京都交響楽団は、昭和に開催された東京オリンピックを機に設立され、2025年は創立60周年の記念イヤー。

ジョイントコンサートはその記念事業の目玉の1つで、12年ぶりの開催となった。

舞台上、東京都交響楽団の演奏家たちの間に、体の小さな子ども、高校生、大学生も、おのおのの楽器を持ってスタンバイしている。

演奏前のルーティン、コンサートマスターが席を立ち、メンバーと音色を合わせいよいよ始まる、というこのタイミングで、客席までティーンズの緊張感が伝わってきた。

それもそのはず、東京都交響楽団は日本3大オーケストラの1つ。

楽員になるためには相当ハードルが高く、プロの演奏家の中でもトップクラスだ。

一方のティーンズといえば、1300人の観客の前で演奏するのが初めての人もいれば、オーケストラで演奏することさえ初めての人も。

緊張しないわけがない。

ジョイントの演目1曲目は、シベリウスの交響詩「フィンランディア」。シンバルが打ち鳴らされ勇壮な曲調から、時折、木管楽器や弦楽器でやさしく伸びやかな旋律へと変わる。

演奏が始まると、緊張していたティーンズも、曲調に合わせて体を前後左右に揺らすなど、実に集中した様子で、見事なパフォーマンスを見せてくれた。

2曲目は、ワーグナーの楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲。
ティーンズが入れ替わり、こちらも素晴らしい演奏で、曲目が終わると同時に、客席から大きな拍手が送られた。

演奏後、参加した2人のティーンに話を聞いた。

高校3年生の松本純誠さん(バイオリン歴14年。今回、コンサートマスターを務めた):
とにかく楽しかったです。プロの方に教わることで、曲の解釈がいままで直観的であったものを理論的に意味づけられるようになりました。音楽に関わっているというのは、自分としてはすごい楽しくて、今後も続けていきたい。大学でもオーケストラに入って、音楽を楽しむことはやっていきたいなと思っています。

武居理緒さん(10歳。バイオリン歴は4歳の時から):
迫力のある演奏ができて楽しかったです。いつも1人で稽古をしたり、舞台でも1人でしか演奏したことがないので、一緒に演奏できて面白かった。観客の方たちからの拍手も気持ちよかったです。

東京都交響楽団の楽員で、バイオリン奏者の酒井幸さんは、ティーンズに点数をつけるとしたら100点満点だったと話します。

東京都交響楽団・酒井幸さん:
練習の時よりも、本番前は、緊張しているんだろうなって思ったんですけど、今まで練習してきたものが全部出せるように、一緒に弾きながらこっちもサポートできたらいいなって思いながら臨みました。

酒井さんもまた、高校生の時にジョイントコンサートに参加して、オーケストラのすばらしさ・迫力に感動し、都響に入団することが目標になったといいます。

東京都交響楽団・酒井幸さん:
私にとっても今でもすごく大切な思い出なので、今回参加した方たちが1人でもうれしい気持ちとか幸せだったと感じてもらえればうれしいです。

オーケストラとの出会い、そして音楽を楽しんでもらう、をモットーに、都響はさらに新しいコンサートの形を模索しています。

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。