9月11日の記録的大雨。都市型災害の内水氾濫で被害増あっという間に浸水した。店頭に並ぶ商品も被害に遭い、マンションでは止水板の準備が間に合わなかった事例もあった。

東急目黒線西小山駅そばにある、弁天通り商店街と、にこま通り商店街。
夕方の時間、買い物客でにぎわいを見せている。

しかし9月11日の記録的大雨の際には、西小山駅周辺は冠水し、住民によると野菜がぷかぷか浮いていたという。

にこま通り商店街の理事長・笹野邦貴さんは、「これほど短時間に雨が強く降ったのは見たことがない。注意を呼び掛ける時間もなかった」と話す。

30分ほどで水かさが上がり、マンションの管理人が止水板を準備しはじめたときには、もう水がエントランスへ流れ込んでいたといい、店では、商品を片付ける余裕もなかったケースもあったという。

当時のリアルタイムの観測記録によるとこの一帯では、午後1時40分ごろから雨が降り出し、午後2時30分から10分あたりの雨量が15ミリを超えて雨の勢いが急に強くなった。

午後3時ごろには10分あたりの雨量が30ミリを超えてピークに。
連続雨量は150ミリ近くになるなど記録的短時間大雨情報の目安となる100ミリを大幅に超えた。

この大雨による被害で都内の1200件以上の家屋が浸水し、目黒区だけで257件が床上浸水、30件が床下浸水となった(9月26日現在)。

目黒区の防災担当者がいま、どの地域で被害が大きかったのかなど実態調査を進めているが、目黒区内の被害の多くが、内水氾濫による被害だったとみられている。

内水氾濫とは、短時間に集中して大雨が降ると、排水が追いつかず、下水道や水路などから水があふれだす現象のこと。アスファルト等で舗装された都市部で起こりやすく、都市型災害とも呼ばれている。

地形などを理由に内水氾濫が起きやすいエリアがある。

目黒区の水害ハザードマップでは、河川の氾濫時に浸水が想定される地域が赤く囲われており、内水氾濫が発生すると想定されている地域は、緑や青で記されている。

今回被害のあった西小山駅周辺は、青と緑のエリアが多くなっている。

その理由の1つに、暗渠となっている川の存在がある。

地図では記載されていないが、かつて流れていた川が下水道幹線として整備され、上部が道路の暗渠となっている。

今回、この暗渠からも水があふれ出たと住民は話す。

にこま通り商店街・笹野理事長:
昔から住んでいる人は暗渠の存在は知っているから警戒はするけれども、最近引っ越してきた人は知らない人のほうが多いと思う。 

このエリアは、2004年の台風23号2010年の台風9号でも浸水の被害を受けた。

現在、東京都では内水氾濫対策の工事を行っていて、完成すればこのエリアでの浸水被害が軽減される予定だが、都の防災担当は、内水氾濫から守るために、日ごろからの防災意識と、どこに注意報や警報が出ているのかを確認してほしい、と呼びかけている。

にこま通り商店街の笹野理事長は「天気予報や、注意報、警報などの情報をもとに、早め早めの対応をとるしかないが、仕事もしているので短時間に雨量が強くなった今回のようなケースは対応が難しい」と話す。

地球温暖化による影響で激甚化する災害。

被害のあった地域を取材して、ハザードマップはもちろん、自分の住んでいる街の地形などについても把握することが、防災に役立つことがわかった。

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。