監督2年目でリーグ優勝 最後は「伝説のホームラン」
徳光:
月日が流れまして、梨田さんは近鉄の監督に就任するわけでありますが、近鉄としては12年ぶりに優勝を果たすわけですよね。これはやっぱり梨田さんの野球人生の中では思い出深い1ページじゃないですか。

梨田:
前年が最下位ですからね。就任していきなり最下位でね。あの時は1年目、僕がちょっと間違ったのは「機動力野球」っていうね、そういうことを掲げていったんですよ。盗塁したりエンドランかけたりっていうね。それが大失敗でしてね。近鉄の良さって何かっていうと「いてまえ打線」なんですよ。「よし、じゃあもう打線は信じて、もう打っていこう」ということで。
2年目に優勝っていうんで。
徳光:
なんと優勝を決めたのは、相手は仰木監督ですよね。

梨田:
そうです。あの時仰木さんもね、人がいいというか悪いというか。まだ試合始まる前ですよ。「ナシおめでとう!」って。「先に握手しておこうや」って。一番先に握手したのが仰木さんなんです。
徳光:
そうなんですか。
梨田:
ああいう方なんです、仰木さんもね。
徳光:
でもあの試合9回すごかったね。いまだにあの時のニュースで、とにかく漢字がバーって。
梨田:
「代打逆転サヨナラ満塁ホームラン」の優勝。代名詞が6つ。
徳光:
見たことないっていうくらい。
そういう時の監督采配、見事に当たったみたいな感じでしょうけども、どういうものなんですか。

梨田:
いやー、なんか夢のようっていうか、胴上げのシーンもいっぱいありますけど、ふわって上がってから、なんか本当、宇宙遊泳してるようなね、宇宙船に乗ってるような感じの胴上げだったなっていうのは。
徳光:
そうですか。
梨田:
すぐに着地できてないんですよ。
徳光:
これは実際に体験者でないとわからない感覚かもしれませんが、そういうものなんですかね。
やっぱり野球人生、そういう意味では本当に良かったなという感じがございますかね。

梨田:
良かったですね。ただ近鉄が合併してしまったのがね、僕が監督の時でしたんでね。
徳光:
現場を率いる監督としましては、本当にこれはつらいお気持ちになられたでしょうね。
梨田:
めちゃくちゃつらかったですね、これは。
徳光:
やっぱり選手の気持ちをおもんばからなければならないわけですからね。
梨田:
大阪ドームでの最後のゲームが西武戦だったかな。そこの、今から試合の準備しなくちゃいけないのに動かないんで、みんなが。それで僕はしゃべったのね。
徳光:
ああそうなんですか。

梨田:
「今みんなが着けてるユニフォームは近鉄の永久欠番だ」って言って。泣いてる者もいましたけどね。そう思って1年でも何日でも長く、ユニホームを着られるような野球界にいてくれと。
徳光:
なるほどね。これはバラバラになっていく選手たちの背中には本当に根づいたと思いますよね。
2008年に北海道日本ハムファイターズ監督になりまして、ここでも2年目にパ・リーグを見事に制覇するわけでありますけど。

梨田:
日本ハムに行った時は、やっぱりダルビッシュ有がいて、投手陣が良かったんです。
徳光:
ダルビッシュ投手というのは、何がやはり一番すごかったんですか。
梨田:
めちゃくちゃ、あれだけ体が大きくても器用なんですね。球種だって、10種類、11種類ぐらい平気で操って、まだ今でも154~155km/hぐらい投げますからね。
徳光:
梨田さんが監督を辞められまして、2年後に日ハムに今度は大谷翔平が入ってくるわけでございますけど、梨田さん、キャッチャーとしてですね、大谷を抑えるとしたら。

梨田:
一番いいのは、やっぱりアウトコースですね。彼、インサイドギリギリの球をレフトでホームランするんですよ。ですから、大谷君がインサイドを投げるんだったら、右のツーシーム。こう曲がってくるスライダーのようなね、左のスライダーみたいな球をインサイドから投げると、ちょっと腰が引くんですね。あとは基本、外。
徳光:
皆さん、なんかインコースの高め高め。インハイって言いますね。
梨田:
以前は、何年か前は、インハイがやっぱりちょっと弱点だったんです。ところが去年ぐらいからこの高さを。
徳光:
レフトに持っていきますね。
梨田:
レフトとかセンターに打っているんですね。ですからやっぱり、一番有効なのはアウトコースの低いところ。そして、こっちへの出し入れというかね、そういうふうな方がいいのかなというね。
徳光:
でもそういう大谷の話はともかくとしまして、やっぱり梨田さん、あらためてやっぱり近鉄バファローズという球団でですね。選手と監督、この2つの立場で優勝を遂げている。そしてまた「江夏の21球」とかですね、「10.19決戦」というプロ野球史に残るような2つの場面にも立ち会っていらっしゃるという梨田さんでございますので、これからも梨田さんなりのしなやかな打法のような視点で、野球界を見守って、いろいろコメントしていただければと思います。ありがとうございました。
梨田:
ありがとうございました。
(BSフジ「プロ野球レジェン堂」 2025年8月26日放送より)
「プロ野球レジェン堂」
BSフジ 毎週火曜日午後10時から放送
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