盗塁阻止率「.536」 捕球からの早業送球伝説
徳光:
梨田さんはとにかく強肩で知られているわけでありますけども。

梨田:
肩は本当に強かったんでね。ホームベースから外野、レフトのポールですね。ポール際にノーステップでピュッと投げたら、100メートルぐらい投げられてたんですよ。
徳光:
はぁーすごいですね。ノーステップで。
梨田:
はい、ノーステップで。
徳光:
梨田さん、肩が強いのと、それからやっぱりコントロールってのがあるじゃないですか、キャッチャーの場合は。(送球の)コントロールが梨田さん良かったですよね。

梨田:
それがね、僕は骨折したんですよね。(右手を)亀裂骨折しましてね。ファウルチップが当たって、可動域がまったく使えなくなって。
徳光:
中指、右の中指の。

梨田:
で、もう全然今までこんな(直線的な)球投げてたのが、こんな(山なりの)球しか投げられなくなって。ちょっと冷静に考えようと思って、いろいろ考えたら、今できることは「捕ってから早く投げる」こと。ということで、捕ってから早く投げる練習したんですね。
徳光:
捕って早く投げる技ってどういう技法なんですか?

梨田:
捕って早く投げるの、これいろいろなあれがあるんですけど、コンクリートの壁にボールをぶつけるとすぐ跳ね返ってきますよね。木の板にボール投げたら、ある程度跳ね返りますけど、そんな強く跳ね返らない。ベニヤ板に投げたらほとんど下に落ちる。コンクリートといったのが、この手のひら。ここの硬いところ。ここで捕ってあげるとすぐ(右手に)移せる。
木の板というのが、この人差し指の付け根。このあたりが木の板。ミットでいうと芯ですよね。これが木。
ベニヤっていったらこの先の甘い柔らかいところ。それをやるとダメなんで、コンクリートを使うことによって、右手にすぐ投げられる。
徳光:
ちょっときょうお持ちいただいた梨田さんのミットで。
梨田:
ですからこう来た球を、こういうふうに普通、握ってこうじゃなくて、当たったらもうこっちへ。
徳光:
早いですね。
梨田:
ここに来ると、うまくここで捕れる。
徳光:
なるほど、弾ませるって感じですね。

梨田:
受けてこれは遅いんですね。ですからね、これミットですけど。
誰か、ちょっとそっちからボール投げてもらえます?軽く。
手でね、こういうふうにね。
徳光:
今当ててるんだ。そういう。キャッチャーって、そういうことしてるんだ。なるほど。キャッチしてないかなっていう。
徳光:
1979年、現在もパ・リーグ記録となる盗塁阻止率5割3分6厘。これすごいですね、この数字は。

梨田:
5割3分6厘といって、走ってくる回数がすごく減ったと思うんですよ。ですから、ある程度値打ちがある数字だと思うんですけど。
徳光:
なるほどなるほどね。
阪急戦では7割8分6厘と。
梨田:
なんか阪急戦になると、アドレナリンというかね、今までちょっと、「きょう肩とかヒジおかしいな」と思っても治るんですね。

徳光:
そういう意味ではですね、強肩キャッチャーの梨田のライバルということになりますと、福本(豊)さんだと思うんでありますけど。どうでした福本さんは。

梨田:
福本さんは、基本的にもうアンパイアがね、「王ボール」、「長嶋ボール」じゃないですけども、「福本セーフ」みたいなのがありましてね。おーし、こりゃ刺したなと思ったら、スライディングする前からセーフ。
徳光:
スライディングする前から。
梨田:
これ刺せるわけないですよね。キャッチャーも40メートルぐらい先ですけど分かるんですよね。「よし刺した」と。とんでもないです。セーフ。

徳光:
オールスターの時に、セ・リーグを代表する盗塁王・高橋慶彦、これを刺しましたよね。
梨田:
2回刺したんです。そしたら福本さんが喜んでね。「すごいなお前」。やっぱりね。刺したら。当時やっぱり「高橋、高橋」って言われてましたからね。福本さんも、ちょっとこう陰りが出てきたころだったと思うんで、福本さんが一番喜んでくれましたね。
徳光:
そうですか。