巨人とのオープン戦 サードまで行けば長嶋さんに…伝説
徳光:
プロにはなじめました?

梨田:
いや。でもね入った瞬間に、ちょっと早すぎたかなとは思いましたね。体力とか技術の差とかレベルの差はもう、すごいものがありましてね。うわーこれはちょっと早まったなっていうのはちょっと感じましたね。

徳光:
ああそうですか。でもあれですよね。1年目に1軍でデビューされているという。
初出場の時というのは5番センター。
梨田:
センターでしょ。これね、偵察要員というね。
徳光:
偵察メンバー。

梨田:
左ピッチャーが来るか右ピッチャーが来るか分からないときに、右ピッチャーだったら左が出たりとかっていう。
徳光:
今みたいに予告先発とかではないので。
梨田:
おっしゃる通りです。
徳光:
メンバーに入っているけれども、代わってるということですね。
梨田:
はい。変わるんです。

徳光:
3打数ですが、2安打。すごいですね、初年度で。
梨田:
いやこれ、たぶん江本(孟紀)さんやったかな。
徳光:
初ヒットですか。
梨田:
初ヒットは、江本さん。江本さんですね。

梨田:
江本さん、大阪球場でね。大阪球場って大好きでね。狭いんですよ。だからあんまりこう、力まなくても打てるようなね。

徳光:
でもあれですね。3打数2安打っていうのは大したもんだなと思うんです。
これ、パ・リーグとセ・リーグで違いますけど、憧れの巨人のオープン戦。V9の選手たちとはオープン戦では対戦されて。

梨田:
(オープン戦で)ヒットを打つとね、王さんがね、やっぱちょっと「ナイスバッティング!」とかね、「いいパッティングしてるね」とかね、声かけていただくんですよ。
徳光:
1塁ベースで。
梨田:
あのあたりはね、すごくやっぱりうれしいっていうか、憧れの方。で、なんとかサードまで行けば長嶋さんに会える、それはありましたよ。
徳光:
3塁ベースで長嶋さんに何か言われませんでした?
梨田:
3塁で、僕はひょっとしたらホームラン打ったかもしれないんですけど、スーッと走ったら「ナイスバッティング!」とかって言われたような気がするんですね。
徳光:
そうですか。
梨田:
ですから、ああいう方々も自分だけじゃなくて、誰か発掘するというかね。若い人で「あいつ伸びるぞ」とかっていう、そういうのを何かご覧になったような気がするんですよね。
大エース・鈴木啓示が「お前では燃えんのや」伝説
徳光:
当時はあれですか。近鉄の正捕手っていうのはどなただったんですかね?
梨田:
僕が一番最初入った時はまだ、ヒゲ辻(辻佳紀)さんがおられました。

徳光:
ヒゲ辻さんいらっしゃいましたよね。確か。
梨田:
ヒゲ辻さんがおられて。
徳光:
阪神からね。
梨田:
レギュラーっていう感じはなかったんですけどね。とにかくたくさんキャッチャーおられたんですけど、誰もレギュラーという感じじゃないですね。
徳光:
ただこれショックだったんじゃないかなと思うんですけども。キャッチャーとしましてですね、まだまだ未熟ではありましたけれども、いよいよこれからやるといった時に、有田修三さんが入るでしょう。

梨田:
おっしゃる通りです。もうね、僕がプロに入って、1年目、2年目、ちょっと出た時にね、これで近鉄は10年ぐらい、しばらくキャッチャー取らなくていいとかってね、スカウトの人とかみんな言ってたんですよ。
徳光:
言ってましたよね。梨田ありきで。
梨田:
と思ってたら、すぐ有田修三さん取って。ウソつき多いなと思って(笑)。ちょっと嫌な思いはありましたね。
徳光:
そうですか。その後の関係はどうだったんですか。

梨田:
いや僕と近鉄で競り合いながらやってる時に、鈴木啓示さんが有田修三さんをよく指名されるんですよ。
梨田:
それである時に、鈴木啓示さんがね、「ナシちょっと飯行こうや」って言われて。で、ご飯食べる時に「ナシすまんな」って。「最近お前と組まへんから」って。

梨田:
「なんで組まないか分かるか」って言われて、「ナシは悪いボールでも“ナイスボール”って言う」と。で、有田は「こんなボールでよう200勝できたねって毒吐くんや」と。「毒吐くから、あいつ(有田)のミット見たら燃えるんや」と。「お前のミット見ても燃えへんねん」って言われましてね。それが1つ、原因・理由やと。
有田と梨田で「ありなしコンビ」と呼ばれ、正捕手の座を分け合い、77年・82年・84年は2人とも先発マスクが60試合以上に達した。

梨田:
僕出ない時は、有田さんがリードしてる時に、僕もその時に自分で、僕だったら次このバッターに対してシュートを投げるとか、配球を勉強できた。そのうちに、次はこのボール投げたらどこに飛ぶとかね。どういう空振りをするとかっていう、そういう予測、そういうのがすごくできるようになった。有田さんと競争して出れない時に、悔しいとかじゃなくて、「勉強しなくちゃダメだ」と思って。それが監督になって生きたり、解説に生きたりっていうところだと思うんですよね。
【中編に続く】
(BSフジ「プロ野球レジェン堂」 2025年8月26日放送より)
「プロ野球レジェン堂」
BSフジ 毎週火曜日午後10時から放送
https://www.bsfuji.tv/legendo/