甲子園で「春と夏」初戦敗退も 高校日本選抜入り伝説
徳光:
で、高校は浜田高校に進学するわけでありますけども。
梨田:
小島っていうね、中学の時に「ピッチャーやれ」って言われたね。もう亡くなったんですけどね。彼と一緒に野球やってたら、絶対に甲子園行けると思ったんです。で、小島が行くっていう学校に行こうと思ってたんですね。そうしたらプロに行く近道だということで。
徳光:
じゃあプロを考えてたんですか、中学時代から。
梨田:
考えてましたね。プロ野球選手になりたいっていう憧れが。
徳光:
キャッチャーとして。
梨田:
それと僕、中学の時に父親が肝臓がんで亡くなってね。どうしてもプロに行きたいっていう思いが強くなって。
徳光:
小島さんと一緒に。
梨田:
そうなんです。彼が最終的に浜田高校って決めたんでね。で、浜田に決めてよかったんですけどね。
徳光:
なるほどね。小島さんと同じルートをたどったことによって、甲子園には行けるわけですよね。
梨田:
はい、行けました。
徳光:
この初の甲子園はどうでしたかね。

梨田:
いやもう、なんて言いますかね。甲子園球場のあの広さと言いますかね。もう島根県の野球場って外野スタンドがまずありませんしね。びっくりしましたよ、人の多さに。
坂出商業でしたけどね、3 - 4という1点差で負けて。
徳光:
夏も出場しますよね。

梨田:
夏もなんとかかんとかね、出ることができたんですけどね。
徳光:
夏も初戦で敗退ですか。
梨田:
初戦敗退ですね。その時がね、池田高校の蔦(文也)監督。
池田の蔦監督は初めて甲子園に出られて、初勝利を挙げたのが、われわれ浜田高校と対戦して初勝利。
蔦文也(1923〜2001):徳島・池田高校の監督として甲子園優勝3回・準優勝2回。「やまびこ打線」と呼ばれたパワー野球で「攻めダルマ」と称された。

徳光:
そうですか。僕、資料で分かったのでありますけども、初戦で敗退したにもかかわらず、ハワイに行った。全日本の高校生代表で。梨田さん選ばれてますよね。
梨田:
そうなんです。キャッチャーで1回戦で敗退したキャッチャーがね、全日本。それもあの時はハワイ選抜に選んでいただいて。やっぱり高野連の方、見る目があるなと思う、ね(笑)。
徳光:
何を評価してくれたんです?
梨田:
いやたぶん走・攻・守だと思うんですよ。足も速かった、肩も強かった。バッティングはもうひとつ良くはなかったんですけども。だけど春夏のトータルは8打数3安打ですかね。そういった部分の評価だと思うんですけども。いやうれしかったですね。
徳光:
やっぱりハワイ選抜に選ばれたってことは、多少プロ意識する材料にはなったわけですか。
梨田:
おっしゃる通りですね。要するに評価が上がるっていうことは、契約金が上がるってことなんで。うれしかったですね。やっぱり選ばれたというのはね。
近鉄ドラフト2位指名 入団同期でチームの主力に…伝説
梨田:
「広島行きたいな」と思って。松田耕平オーナーと一緒に野球が…と思ってたら。
徳光:
本当は広島に行きたかったわけですか。
梨田:
近いんで浜田と。もう本当100kmちょっとなんですね、南北に。
カープも熱心でね。「梨田取る取る」って言ってね。
徳光:
ですよね。
梨田:
カープ行きたいなと思ってたんですけども。

徳光:
でも当時あれですよね。キャッチャーでいましたね。道原(裕幸)。
梨田:
道原さん。1位でしたね。4学年先輩なんですけど、同じキャッチャーを取るっていうのは、僕はちょっとすごく嫌だったですね。

徳光:
結果的に広島に行かなくてよかったのかなっていう感じも。
梨田:
おっしゃる通りだと思うんです。あんまり近すぎて里心ついたりして。すぐ帰れるんで。
徳光:
その近鉄は何位指名だったんですか。
梨田:
ドラフト2位ですね。
徳光:
これは2位は大変高い評価ですよね。当時の高校生キャッチャーで。

梨田:
当時ウェーバーと言いましてね。1からずっと来て、13番目というのは1位と同じなんですよ。
近鉄で、佐々木恭介さんと梨田で、12、13と、こういう感じで取っていくんで。
もう1位との評価と同じレベルではあったと思うんですよ。
徳光:
そういうことですよね。羽田耕一さんも同じ年に。
梨田:
羽田耕一、橘健治、平野光泰。

徳光:
のちの近鉄を支えるメンバーですよね。
梨田:
そうなんです。ピッチャーは橘で、キャッチャーは梨田で、サードは羽田で、ファーストは佐々木恭介さん、センターは平野光泰さんで。ドラフトで入った5人がスタメンで出ている時が何回かありましたんでね。
徳光:
浜田の高校生としましては、近鉄がどういう会社かというのはそんなには分からなかった。まあ一流会社であるということは分かってたでしょうね。
梨田:
そうですね。私鉄の中で線路の長さが一番だというね。
徳光:
そうなんですか。そういうことをご存知で入ったわけですか。
梨田:
一応、親戚とか知り合いがね、一応近鉄ってこういう会社だから大丈夫だからって。
徳光:
なるほど。