広島の名産・カキの殻を使い豊かな海へ…
早くも変化の兆しが見え始めたプロジェクトのその後を「ツイセキ」します。

【子どもたち】
「大きい!」
「これ何だなんかすごいな」
「多分これ生きているんじゃない?」

廿日市市地御前にある干潟。
週末、子どもたちの歓声が響きました。
ついこの春までは考えられなかった「豊かさ」が、目に見える形で蘇ってきました。
その理由は…


【五十川裕明記者】
「干潟にとても大きなクレーン車がとまっていまして大規模な工事が行われています。まかれているのはこの白い砂のようなものなんですけれども、実は砂ではありません。カキを食べるときに出る殻、カキ殻なんです」

さかのぼること4カ月前にまかれた「カキ殻」の効果です。
ヘドロ化した泥が有害な硫化水素を発生させるため、干潟は魚のエサになるエビやアサリなどが住みにくい環境が続いていました。

【五十川裕明記者】
「まさにこのあたりなんです。泥から硫化水素が発生していたということで、鼻をつんとつくような臭いが目立っていたということなんですが、いまちょうど浜から風が吹いているんですが、まったく臭いはありません」

そこで、細かく砕いたカキ殻を高温で乾燥させ殻の表面にくっついた酸素を泥の中の硫化水素と反応させた結果、環境の改善に成功したのです。

【流域圏環境再生センター・山本民次所長】
「(カキ殻を)細かく砕くことで硫化水素などと触れる面積が当然広くなりますし、反応がすぐに現れます」

生産量日本一を誇る広島のカキ。
むき身にするときに出る年間10万トン以上の殻の多くは、肥料や家畜の飼料などの「資源」として再び活用されてきましたが、近年、新たな需要の掘り起こしが課題となっていました。
まさに広島だからこそできる画期的な環境改善です。

【流域圏環境再生センター・山本民次所長】
「カキ殻は身よりも多く出るので、そのカキ殻をどうするのかというのは県の重要な課題でもあるわけです。やっぱり魚が取れない現状がありますので、魚が増えてほしい。魚は当然エサが必要なわけです。エサとなるものは、だいたい海底に住んでいる」

「いた?カニならめっちゃおるよ」
「カニ、ちっちゃいカニがいるね。すごい、すごい」

干潟で開かれた地元の親子たちによる生き物の観察会では、エビやカニ、マテガイの他、豊富な種類の生き物が確認できました。

【参加者は】
「カキ殻で海がきれいになってカキ殻はすごいと思う」
「これはちょっと劇的に、普段何とも思っていなかったものが、こんなに海に影響を与えるっていうのは、なんかもっと有効活用されることを本当に望みますね」

瀬戸内海を「きれい」な海だけでなく生き物であふれる「豊かな」海へ。
廿日市市でのプロジェクトは今後10年間にわたって続けられ、カキ殻のさらなる可能性を検証します。

【流域圏環境再生センター・山本民次所長】
「まだ10段階の1ですよ。まだスタート地点なのでこれからこれから。10年後はですねもう明らかに浜ももっと白くなっているし、生物もわんさかいて魚も取れるようになってきていると思います」

《スタジオ》

魚が増えるようにカキの殻を使って環境改善に成功したということです。

【コメンテーター:JICA中国・新川美佐絵さん】
「カキ殻には水質改善とか浄水機能があるらしいんです。これがうまくいったら、水質汚染で悩んでる開発途上国などに技術移転できるんじゃないか、期待したいです」

地元の漁協も最初は半信半疑だったが、1週間程度で臭いが消えたことに驚いていたということです。

テレビ新広島
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