科捜研の不正なDNA鑑定問題で佐賀県警の福田本部長は県議会で陳謝した上で「第三者委員会の設置は必要ない」と繰り返した。一方、専門家は「権力の内側だけの判断で今までも冤罪が生まれてきた」と指摘する。
不正なDNA鑑定「公判に影響ない」
この問題は、佐賀県警の科学捜査研究所に所属していた40代の男性職員が、DNA鑑定記録の改ざんなど不正な作業を繰り返し、去年(2024年)10月までの7年間で130件の不正が確認されたもの。

このうち16件は殺人未遂事件などで証拠として使われているが、県警は「精査した結果、公判には影響ない」としていて、検察は「処分の決定や公判の証拠として使用された事例はない」としている。

証拠として検察に提出された16件の鑑定結果について、県警は11件を再鑑定した一方、残りの5件については鑑定資料が残っておらず再鑑定ができないとして鑑定の経過の記録や電子データを照合したという。

県警は不正鑑定を繰り返した科捜研の40代の男性職員を懲戒免職処分とし、DNA鑑定をしていないのに偽装したなどとして書類送検した。
第三者による検証求める声に警察は…
一方、この問題について佐賀県の山口知事は「物証の信頼が揺らぐことは問題」とし、県警に対し真摯な対応などを求める申入れをしたことを明らかにした。

また、佐賀県弁護士会は、県警の科捜研が行った科学鑑定すべてに対する信頼を失墜させたとして「最大限非難する」との声明を出し、第三者による徹底的な検証を求めている。

これに対し佐賀県警察本部の福田英之本部長は、9月17日に開かれた県議会の一般質問で、「信頼を大きく損なう事案であり重く受け止める」と述べ謝罪した。

佐賀県警察本部 福田英之本部長:
県警察に対する県民の信頼、警察活動に対する信頼を大きく損なう事案であり、重く受けとめるとともに県警察の責任者として深くお詫び申し上げます
本部長「第三者委の設置は必要ない」
その上で、福田本部長は、職員が鑑定資料自体に手を加えたとは認められていないなどとして「公判への影響はない」と述べた。

一方、外部の有識者による第三者委員会の設置については、「県警に指摘・指導をしている県公安委員会が警察外の第三者の立場である」として、新たに設置しないとの答弁を繰り返した。

佐賀県警察本部 福田英之本部長:
県警察としても本事案を受けて、ご指摘のあったような第三者委員会といったものの設置について、その必要があるとは考えていないところであります

また県公安委員会の岸川美和子委員長も「第三者委員会の設置は必要ない」と述べた。

答弁後に議場を後にした県警察本部の福田本部長は、報道陣の取材に対しても議会答弁と同じ内容を何度も繰り返した。

佐賀県警察本部 福田英之本部長:
公安委員会からご指摘やご指導を受けながら調査を進めてまいりましたので第三者委員会の設置は必要ないと考えております
「公判に影響がなかったのは結果論」
一方、山口知事は改めて再発防止策を求めた。

佐賀県 山口知事:
公判には影響がなかったという話もそれは結果論なので、決して起きてはいけない話で、我々の民主主義の根幹を揺さぶるような話でもあるので、決して起きてはいけない再発防止策を打ってもらいたい
「権力の内側だけの判断に過ぎない」
刑事訴訟法を研究する大学教授は、「公判に影響はない」との判断について次のように指摘する。

甲南大学 渡辺修 名誉教授:
どういうやり方での改ざんがなされていて、それが証拠全体の中でどのような役割を果たしていたのかが客観的に明らかにならないで、一体誰が判断したことになるのか結局、権力の内側だけの判断に過ぎない。それは納得できない。そうして今までも冤罪が生まれてきたわけですから