福島県の山々で一部が赤く変色する現象が確認されている。視聴者から寄せられた「下郷町方面の山の一部が変色。猛暑の影響で枯れ始めているのでしょうか?」という疑問に対し、福島県樹木医会の鈴木俊行さんは「これは”ナラ枯れ”です。虫によってナラが枯れています」と説明した。
■福島県は全国2位の被害規模
林野庁の令和6年速報値によると、ナラ枯れ被害量の全国ランキングでは、福島県は2万1000立方メートルで全国2位となっている。1位は青森県の3万1800立方メートル、3位は岡山県の2万600立方メートル、4位は栃木県の1万4900立方メートル、5位は秋田県の1万3900立方メートルとなっている。青森県では地元紙が一面で「ナラ枯れ」を取り上げるなど、深刻な問題として注目されている。
■県内では南会津地方で被害集中
福島県森林保全課の令和6年速報値(民有林のみ)によると、県内のエリア別被害量は南会津地方が1万955立方メートルで最も多く、次いで会津地方が4136立方メートルとなっている。3位以下は県北(232立方メートル)、県中(200立方メートル)、いわき(183立方メートル)、相双(153立方メートル)、県南(35立方メートル)と続く。なお、県南地域は2023年(令和5年)までは被害がゼロだった地域である。
■原因は「カシノナガキクイムシ」という害虫
ナラ枯れの原因は「カシノナガキクイムシ」という害虫である。この虫はナラの木に穴をあけ、持ち込んだ菌によってナラが枯れる現象を引き起こす。現在、九州・四国・本州に分布している。
福島県森林保全課によると、県内では2000年に西会津町で初めて確認された。国道49号線を通じて新潟から運ばれてきた木材から広がり、ナラの多い会津地方で被害が拡大したとみられている。2000年代に増加した被害は2010年代に一時減少したものの、令和に入ってから再び増加傾向にあるという。
■広がる被害がもたらす様々なリスク
福島県樹木医会の鈴木俊行さんは、このまま被害が広がると複数の問題が生じる可能性を指摘する。まず、クマの主要な餌となるドングリが減少することで、「人里でのクマ出没が増えるのでは」と懸念している。
さらに、「枯れ続ければ、新緑や紅葉の時期に枯れ木が目立つようになり景観の悪化につながる」と指摘。特に7月から8月にかけて枯れが進行し、山が赤く変色するという。さらに深刻な問題として、「根も枯れると大雨時の土砂災害のリスクも高まる可能性がある」と警告している。
専門家の中には、この現象の背景に温暖化の影響があるのではないかとの見方もある。
■対策は難しいが発見時の連絡を
福島県森林保全課は対策について、「ブナは人工林のスギやマツと違い急峻な高い山にあるので対策が難しい」としている。そのうえで、「発見したら各市町村に連絡を」と呼びかけている。
※2025年9月5日(金)放送の福島テレビ「テレポートプラス」内の天気コーナー「福テレ空ネット」から抜粋した記事です。