陸上自衛隊が進めている精鋭隊員「レンジャー」育成教育の改革で、市街地での戦闘の教育や、射撃訓練の増加、無人機対処の訓練体制強化などプログラム変更を検討していることが、FNNの取材でわかった。

陸自のレンジャー隊員は、有事の際に最前線で任務を行うことが想定される精鋭で、陸海空すべての自衛隊の中で最も過酷な訓練を行っているとも言われる。

レンジャー隊員資格を持つ幹部自衛官も、取材に対し、自身が経験したレンジャー訓練を「2~3日寝ないとか、2人で1日1リットルの水でやり過ごすなどしていた」と振り返った。

一方で、人間の生命維持機能の限界に挑むほどのそうした訓練によって、2021年9月に熊本で30代の隊員がレンジャー訓練中に重度の熱中症に陥り命を落としたのをはじめ、隊員が死亡する事故がここ数年相次ぎ、陸自は4月から一部の部隊(富士学校・第1空挺団・水陸機動団)を除いて今年度中の新たなレンジャー育成を中止し、教育プログラムや安全管理の在り方の見直しなどを進めている。

レンジャー訓練について、陸自は「強靭な体力と精神力を養う。山地、水路、空路潜入に必要な能力や、各種任務に適応できる知識、技能等を向上させる」(第13旅団ホームページ)ことなどを狙いとして挙げている。

つまり、従来のレンジャー訓練は、「強靱な体力と精神力」を養い、「山林での戦闘」シナリオに重きを置いていた。

しかし、部隊の所在地によっては山林での戦闘を重視する必要性が低いため、陸自は地形や地域性などを考慮し、市街地で被害を最小限に抑えながら戦う訓練を新たに導入したり、「過酷な状況に耐え抜く能力を鍛える」ことが重視されてきたためレンジャー育成では機会が少なかった射撃訓練を増やすことなども検討している。

また、ロシアによるウクライナ侵略で多用され中国など各国でも増備が進む無人機に対応する訓練を増やし、そのために必要な無人機を使用できる訓練場所の確保など環境整備の強化も検討している。

「山林で耐える」から「市街戦」「無人機」へ…現代日本を取り巻く脅威が多様化・複雑化・高度化し、レンジャー隊員の育成プログラム改訂が焦眉の急であることを、自らもレンジャーである前出の幹部自衛官は一言で言ってみせた―――「いまの時代に精神論は通用しない」。

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