しまなみ海道の開通により廃止されていた広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ航路が、26年ぶりに復活する。10月の土日祝9日間限定で、サイクリングと船旅を自由に組み合わせて経由する島々をめぐることができる。
サイクリストの聖地に新たな移動手段
瀬戸内海の6つの島を橋でつなぎ、尾道市と今治市を結ぶ「しまなみ海道」。風光明媚な景色が楽しめる全長約70kmのサイクリングコースは国内外の愛好者から“聖地”と呼ばれている。
一方、1999年に橋が開通するまで島々をつないでいた船は尾道駅前桟橋~生口島瀬戸田港の定期航路を残して、ほかは姿を消した。

ところが観光客の増加とともに「自転車で走り切るのは大変」「行ったはいいが帰る手段がない」との声が増えてきた。そこでJR西日本と地元事業者が連携し、実証事業として航路を復活させることに。走りたい区間を自転車で走り、船でも移動できるようにすることで、熱心なサイクリストだけでなく新たな層の取り込みを図る。
最大5000円で2日間乗り放題
運航日は10月4・5日、11~13日、18・19日、25・26日の9日間。尾道駅前桟橋を出発し、生口島か大三島で船を乗り換えて今治港に至るルートで、尾道側は「サイクルシップ・ラズリ」、今治側は「サイクルシップ・しまなみ」を使用する。いずれも自転車を折りたたまず積載できる特別仕様の旅客船だ。

乗船チケットは「しまなみクルージングパス」として販売され、連続する2日間有効の乗り放題制。料金は尾道~今治全区間が5000円、尾道~大三島井口港が2500円、生口島瀬戸田港~今治港も2500円、生口島瀬戸田港~大三島井口港は1000円。いずれも自転車の積込料込みとなっている。
島々での“滞在型観光”をねらう
実際に、尾道市の事業者が運航する「サイクルシップ・ラズリ」に乗ってみた。

1階と2階にあわせて50台以上の自転車を積載可能。階段には自転車のタイヤを滑らせるレールがあり、スムーズに移動できる。
尾道駅前桟橋を出発して約40分。近年、観光客が急増している尾道市瀬戸田町の生口島に到着した。商店街や宿泊施設、美術館などがあり、外国人観光客の姿も多く見られる。

通訳案内士は「最近ヨーロッパからのサイクリストが多い。アメリカ、カナダ、オーストラリアの人もいる。一部だけ自転車で残りは車っていうパターンが多いかな。航路ができると便利だと思う」と話す。

尾道駅前桟橋から今治港まで船だけで移動した場合は最短3時間で着くが、今回の事業のねらいは「途中で下船し、島々に滞在してもらうこと」。地元の観光施設や宿泊業への波及効果につなげたい考えだ。
尾道市の平谷祐宏市長は「生活航路の維持としまなみ海道のサイクリングの魅力向上を両立できる」と話し、今治市の徳永繁樹市長も「点から線、線から面へと観光を広げる起爆剤になる」と期待を寄せる。
JR西日本などは実証事業の成果を分析し、2026年度以降の実施も目指している。
(テレビ新広島)