広島の海で開発が進められてきた「自律航行船」。その画期的なシステムが、初めて観光目的の船に搭載された。暗い時間帯でも安心安全な運航が可能となり、サンセットクルーズなど新たなビジネスにつながりそうだ。

自律航行システムで水上移動を手軽に

鈴木崇義 記者:
愛媛県の大三島です。すぐ隣は広島県の生口島。しまなみ海道が島々を結ぶ美しい景観の中、「サイクルタクシー」という船が止まっています。多くのセンサー類が付いていますね

サイクリスト向けの水上タクシー
サイクリスト向けの水上タクシー
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この船は、自動で船を操る“自律航行システム”で運航する。大阪本社の「エイトノット」が“水上移動を手軽なものにしたい”との思いから、2021年に大崎上島で実証実験を開始。多くの島が浮かぶ広島の海で、本島から離島へのモノの運搬や人の送迎、辺りが暗い時間帯の航行などの実用化へ着実に歩みを進めてきた。

2023年9月には広島市内にオフィスを構え、実装に向けてギアを上げている。

「触っていないのに…」自動操縦に感動

そして2月27日、観光船としては初めてサイクリスト向けの水上タクシーに搭載された。
導入したのは、しまなみ海道の中間地点にあたる愛媛県の大三島で、宿泊やカフェなどのツーリズム総合施設「WAKKA」を運営する会社だ。

愛媛県今治市のツーリズム総合施設「WAKKA」
愛媛県今治市のツーリズム総合施設「WAKKA」

株式会社わっか・村上あらし CEO:
ルートを確認して、設定を押します

操舵席に誰も座っていない状態で船は港を離れ、“自動”で進み始めた。

これまでの実証実験ではEV船が使われていたが、今回はEV船よりも速力が2倍近いエンジン船。白い波しぶきを立て、速度を制御しながらも力強い運航を見せる。エイトノット以外の船では2例目、観光客向けの船に搭載されたのは初めてだ。

株式会社わっか・村上あらし CEO:
不思議でしょうがないですね。今、僕は触っていないので。

船の操作でお客様から目を離さないといけないことが多くて、お客様が置いてけぼりになることがある。これだとお客様のケアもできるのですごくいいですね

水上タクシーでクルージングを満喫した後、帰りは自転車…という楽しみ方をするサイクリストも多いという。

株式会社わっか・村上あらし CEO:
船と自転車はすごく相性がいいので

操船経験の浅いスタッフでも安心

導入の大きな決め手は、スタッフの操船経験が浅くても安心安全な運航を実現させられることや、漂流物などが見えにくい暗い時間帯でも運航が可能になり、サンセットクルーズなどの新たなビジネスにつながること。
「エイトノット」によると、ほかにも複数の船舶事業者と自律航行システム導入に向けたやりとりが活発化している。

今後、法律や安全面などの“大きな荒波”を乗り越えて実現を目指すのが「無人航行」だ。

エイトノット・木村裕人 CEO:
当初、われわれが思い描いていた2025年には、どこかのエリアで“完全”無人航行のテストをしたいという話がありました。現在、広島県とタッグを組みながら実現に向けて日々議論を重ねている最中です。必ず実現したいと思います

海上輸送の可能性を広げる今後の展開に、ますます目が離せない。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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