シングルマザーで小学生の子どもが2人いるフルタイム勤務の友人は、この炊飯リズムを知ってから毎日実践しているそうで「ワンオペフルタイムに優しいおいしいお米の炊き方」と話してくれました。早炊きモードで炊飯中に味噌汁やおかずなどを作ると効率よく食事の準備が整います。

あえて「早炊きモード」を使う理由

しっかりと吸水させていれば、むしろ早炊きモードのほうがベストだと感じます。普通炊飯モード(白米モード)は温度を上げながら吸水させていく工程がありますが、すでに吸水は済んでいるのですから、吸水目的でじわりと熱を入れていく必要ありません。逆に、早炊きモードを使う場合は長時間吸水させないと炊きあがりのご飯が硬くなってしまいます。

しっかりと吸水していれば「早炊きモード」でおいしく炊き上がる
しっかりと吸水していれば「早炊きモード」でおいしく炊き上がる

「低温長時間吸水+早炊き」は、ガス炊飯のように単純に熱が入るため、そのお米本来の味を引き出しやすいと感じています。

また、近年は猛暑の影響で、普通炊飯モードではご飯の表面がべたついてしまうお米も多くなっていますが、この「低温長時間吸水+早炊き」はべたつきを抑え、ご飯粒の輪郭を感じやすい炊きあがりになりやすいと感じています(お米によります)。

ちなみに、常温の吸水状態になる「予約炊飯モード」はおすすめしません。特に夏場は細菌の繁殖につながり、お弁当などの場合はごはんが傷みやすくなってしまいます。また、炊飯器をこまめに掃除することは衛生面においてもお米の味わいにおいても大切です。

炊飯は「まとめ炊き+冷凍」「朝炊いてそのまま長時間保温」という人も多いようですが、なるべくいつも炊きたてのご飯を食べられたら嬉しいですよね。 “炊飯リズム”が定着してくると、食事を準備するときにお米を洗い始めるよりも手軽だと感じられるのではないでしょうか。ぜひ一度お試しください。

写真=筆者撮影

柏木智帆(かしわぎ・ちほ)
米・食味鑑定士、ごはんソムリエ、お米ライター。

『お米がもっと好きになる。炊き方、食べ方、選び方』(技術評論社)
『お米がもっと好きになる。炊き方、食べ方、選び方』(技術評論社)
柏木智帆
柏木智帆

米・食味鑑定士/ごはんソムリエ/お米ライター。大学卒業後、2005年神奈川新聞社に入社、編集局報道部に配属。新聞記者として様々な取材活動を行うなかで、稲作を取り巻く現状や日本文化の根っこである「お米」について興味を持ち始める。農業の経験がない立場で記事を書くことに疑問を抱くようになり、農業の現場に立つ人間になりたいと就農を決意、8年間勤めた新聞社を退職。無農薬・無肥料での稲作に取り組むと同時に、キッチンカーでおむすびの販売やケータリング事業も運営。2014年秋より都内に拠点を移し、お米ライターとして活動を開始。2017年に取材で知り合った米農家の男性と結婚し、福島県へ移住。夫と娘と共に田んぼに触れる生活を送りながら、お米の消費アップをライフワークに、様々なメディアでお米の魅力を伝えている。また、米食を通した食育にも目を向けている。2021年から「おむすび権米衛」のアドバイザーに就任。
著書に『知れば知るほどおもしろいお米のはなし』(三笠書房)、『お米がもっと好きになる。炊き方、食べ方、選び方』(技術評論社)がある。