“気持ち悪さ”にこそ勝算あり

こんなニュースの一コマを覚えている方も多いだろう。

トランプ大統領の目の前に置かれた金色の物体…

この記事の画像(28枚)

その正体は、大阪・関西万博土産に作られた金色のミャクミャク貯金箱だ…

作ったのは、かつてキモチ悪いとまで言われたミャクミャクをお土産グッズとして、次々ヒットさせ我が世の春を謳歌する、この男…稲本ミノル・49歳

見た目はチャラいが、侮ってはいけない。

この男が産みだした、万博の公式グッズは実に、400種類以上!

ヘソプロダクション・稲本ミノル社長
今回やっぱり関西の祭りとして何億っていう仕込みしてたんで。

だが、その豪腕のルーツを探るべく、サラリーマン時代の稲本さんを振り返ると…

上司(再現) 
誰が買うんだよ、こんなもの!!

稲本ミノルさん(再現)
こんなクソみたいな会議やってられるかい!

企画が通らず、会議室で頭を抱えもがき苦しむ日々だった。

稲本ミノルさん(再現)
手応えのある人生を生きたい!

そう願い、走り続けた「浪速あきんど」の痛快人生があった!

まず、稲本が見せてくれたのはこの万博のためにだけ借りたという巨大な倉庫…

その全ては、自身が企画・製造したものだという…

稲本ミノルさん
これですね。(カップ)ラーメンの蓋が砂時計になってて3分計れるミャクミャク砂時計です。

他にも、見た目にこだわりまくったという「ミャクミャクハンディファン」。

取材班
宮根さん!こんばんは

まねまねミャクミャク トコトコぬいぐるみ
宮根サン!コンバンハ

オウム返しが可愛い「まねまねミャクミャク トコトコぬいぐるみ」など。

中でも、お気に入りは、トランプ大統領にも贈られたこの金色のミャクミャク貯金箱

稲本ミノルさん
最初1000個作ったんですけど、すぐ売り切れちゃって…

初めは、「キモチ悪い」とさえ言われたミャクミャク…

しかし、稲本の勝算は意外にも、その「気持ち悪さ」にこそあったという…

稲本ミノルさん
「気持ち悪い」とか言ってる時点で、もう“違和感”感じてるわけじゃないですか。それだけインパクトっていうか、心に残りやすいっていうのは、いけんちゃう?という。

人生、負のループからの脱出

今でこそ、初めから勝ちは見えていたという稲本だが、その人生は、かつて負のループにおちいっていた。

大学卒業後、テレビ制作会社に入社するも、 この世界ではトップになれないと、わずか半年で退職…定職につかないまま、一時は、借金が300万円にまで膨らんだという。

そんな彼の人生が大きく変わったのは、25歳の時…

稲本ミノルさん
兄貴が25歳で亡くなったんですけど事故で。自分が25歳になった時に思ったんですよ。こんな感じで生きてたらダメだっていう。

兄が亡くなり、感じたのは「人生はいつ終わるか分からない」ということ。

その時、心に決めたのが…

稲本ミノルさん
全部、その才能なかったらなかったで、諦められるまで全部(夢を)潰してみようっていう。

とにかくやってみて、才能が無い分野を見極める “夢を潰す”という作業。

脚本家を目指していた稲本は、1冊の本を世に送り出すも、数百冊しか売れず。

「大好きなオモチャの企画なら…」

覚悟を決めて、28歳にして選んだのが玩具メーカーへの就職だった。 大好きなオモチャの企画なら、 何か掴めるかもしれない…

稲本ミノルさん
一日3つ企画書を作って提出しようと決めてたんですよ、ルーティンとして。

ところが…

上司  (再現)
こんなの、似たような商品がいっぱいあるだろ!

上司 (再現)
誰が買うんだよ、こんなもん。

稲本ミノルさん
自分の未熟さというか自分のアイディアなんて通用しないというか。

そんな中、ある日、上司に言われたのは…

上司 (再現)
仮にそれ作ったとして、どこに売る気?それが見えない商品、リスクが大きすぎて会社としてはOK出せないよ!

「人が求めているものを形に」

稲本ミノルさん(再現)
…そうか、買い手さえいればいいんだ。

と、気付いた稲本は商談の際に…

稲本ミノルさん(再現)
今、欲しい商品ってありますか?

商談相手(再現)
そうね…大阪らしい、おもろい土産があったら売れそうよね。

稲本ミノルさん(再現)
なるほど…それ、僕、作ります。

こうして生まれたのが、たこ焼きが歩き出す!という商品。

上司(再現)
これ、面白いな!いつ納入できる?

この成功体験で気付いたのが…

稲本ミノル社長
誰かを巻き込みながら、人が求めているものを自分なりに形にしていく方が近道なんだって。

とは言え、巻き込まれた方はたまらない…

土産物店元店長・中元康弘さん
ちょっと最初のインパクトが凄すぎて、赤のベルベットのスーツに、もう派手な感じで来られたんで、「ちょっとこの人とは合わないな」っていうのがまず第一印象。

しかもさらに追い打ちが…

土産物店元店長・中元康弘さん
あと、名刺交換させてもらったんですけど、お名前が「ミノル」とカタカナだったんで、「珍しいですね」ということでお話させてもらうと、「本名は違います」って言われまして、そこで、さらに嫌いになったなっていう…

と語るのは、当時、土産物店の店長だった中元康弘さん…

「オモチャ売るなら親に売れ!」

ところが、稲本は、そんな周囲の目にもめげずまたまた、ヒットの法則を見つけてしまう。それが…

稲本ミノルさん
(売り場を)見てると、親が「これにしときなさい」っていう形、多いなと思ったんですよ。子供が喜ぶとかじゃなくて。「これだったら子供に持たせたい」。

そう!「売るなら子供ではなく、親に売れ!」

そんなコンセプトで開発したのが、これまた、大ヒットとなった乗り物のイラスト入り靴下だった。

こうして、若くして会社きってのヒットメーカーになった稲本だったが…

上司  (再現)
失敗のリスクが大きいなぁ…却下だな。

それでも続く、上司の安定志向に…

稲本ミノルさん(再現)
こんなクソみたいな会議やってられるか!

ついに、ブチキレてしまう…

稲本ミノルさん
サラリーマンをしてる時に何が嫌かって、自分で責任取れないことが嫌だったんですよ。“手応えのある人生を生きたい“って、ずっと思ってたんです。

僕は、手応えのある人生を生きたい…

「手応えのある人生を」38歳で会社設立

そんな思いが契機となり2014年、38歳で「株式会社ヘソプロダクション」を設立。

その、一つ目のヒット作が、電車のブレーキハンドルの形をした商品。

稲本ミノルさん
これ、ペットボトル開けるオープナーなんですね。

なんと、このハンドルをペットボトルのキャップに噛ませると…

稲本ミノルさん
これ「プシュー」って炭酸開ける時にいうんですよ。電車も同じなんですよ。これ、なんかめっちゃ売れたんですよ…

まさに、「鉄道オタク」も感涙の作品で売り上げ1億円超えの大ヒットに。さらに…

稲本ミノルさん
LINEが来て「忖度っていうワードで面白いお土産考えれるんちゃう?」みたいな感じで…

そう、時は「忖度」なる言葉が政界を賑わせていた頃、そこで…

稲本ミノルさん
それを形にするなら何なんやろうと思って、“まんじゅう”やなと思ったんですよ。手土産で、そして中にあんが包まれているのがまさに“忖度感あるよな”とか思って…

(イメージ)
(イメージ)

ところが、土産店では…

土産店(再現)
そういう政治的な商品はちょっとねぇ…

と、ほとんどのお店が、取り扱ってさえくれない有様。だが、転んでもタダでは起きないのが、浪速あきんど!

投じたのは、まさかの一手だった!

稲本ミノルさん(再現)
あの〜、そちらに「忖度まんじゅう」ってありますか?ない?分かりました。じゃあ他の店に聞いてみます。

と自ら電話をかけまくる。

稲本ミノルさん
まあ今やから言うんですけど、お店にめっちゃ電話しました。問い合わせが多い商品に見せるために。

すると、徐々に取り扱い店を増やした「忖度まんじゅう」は多くのメディアに取り上げられ、空前のヒットに!

しかも、きっかけのLINEを送ったのはかつて稲本を嫌った、あの中元店長だというから驚きだ。

土産物店元店長・中元康弘さん
昔からの時代劇の毒まんじゅうと言われるぐらいで。そういう時に、ちょっとひとネタになるんじゃないかなというところで、稲本さんに伝えると「面白いですね」って言って…

まずはインパクト!負の印象は挽回する

 一体、なぜ、一度は酷く嫌った稲本と付き合い続けたのか?

その答えの一つは、稲本が名刺交換をした人に必ず出すという直筆の手紙。

稲本ミノルさん
第一印象とかも、あんまりよろしくないので、「ちゃんとした人間だよ」っていうのを伝えたいのと。謙虚にいられる方法というか、自分を保てる方法として、やり続けてますね。

土産物店元店長・中元康弘さん
最初のインパクト・印象付けをしっかりそこにさせておいて、そこから(手紙で)挽回していくっていうような。

忖度まんじゅうの企画前には、きちんと広辞苑を引き…             

稲本ミノルさん(再現)
へ〜、意外といい言葉じゃん。

自分なりのメッセージも込めていたのだ。

稲本ミノルさん
(忖度の)本当の意味も分かっていく中で、「その言葉で遊べたらいいな」とは思ってましたね。ネガティブな言葉でもないよっていう商品としてのメッセージもありました。

そんな大ヒットとなった忖度まんじゅうについて一本の電話がかかってくる。

電話の男性(再現)
流行語大賞の受賞式に出ていただきたいのですが…

稲本ミノルさん(再現)
えっ!?

なんと、流行語大賞の受賞にまで繋がってゆく…

稲本ミノルさん
「僕が受けに行く資格もないと思う」みたいなこともその時は言ってたんですけど、その人が「世の中ネガティブな感情になっている部分を関西人らしく、すごくユーモアを持って、世の中を明るくしてくれたことに僕たちは感動したし。だから、稲本さんに受け取ってほしい」って言われた時、実はなんか僕うるっとしてたと思います、分かってくれてる人がいるっていうか…

こうして、ヒットさせた商品は数知れず…

平成の最後に岐阜県関市・平成地区(へなりちく)で採取した空気を詰めた「平成(へいせい・へなり)の空気缶」。

ノリの代わりにハチミツが出る「はちみつアラビックリ!?ヤマト」など、快進撃は止まらなかった。

しかし、これらの商品には、山のようなクレームも…

「空気みたいなもんを詰めて売るとは商売なめてんのか!」
「子供が本当のノリを食べたらどうするんですか!」

稲本ミノルさん
一人一人に、「なぜ空気を売ってるのか」とか、「なぜこういう企画やったか」っていうのを、クレームしてきた年配の人とかにも電話で説明した…

すると…

稲本ミノルさん
「あんた、そんなことまで思ってやってんの」とか言われて。結果ファンになってくれましたけどね…

この日、万博会場を歩く稲本は、 こんなことを言い出した。

稲本ミノルさん
今あれ、すごい人気あるじゃないですか…

指をさしたのは、記念写真を撮る行列が絶えない「いらっしゃいませミャクミャク」…

稲本ミノルさん
あのグッズ、今作ろうとしています。あれは「いらっしゃいませ」ですけど、「ありがとうございました」感で作りたいなと思って、今、ちょっと企画中…

万博は、あとおよそ1カ月で終わりだというのに、「浪速あきんど」は次なる商機を見据えていた。(「Mr.サンデー」9月7日放送より)