竜巻の予兆と避難

2006年9月に宮崎県延岡市で発生した竜巻は、わずか5分の間に長さ7キロメートル幅300メートルの範囲に大きな被害をもたらした。竜巻はときに、時速90キロメートルもの高速で移動する。

そのため、被害がどの方角へ広がるのか、予測がかなり難しい。最近ではテレビなど報道機関でも竜巻が発生しやすい気象条件になると注意報が報じられるようになった。

竜巻が近づいてきたときには急に空が暗くなり、雹(ひょう)がバラバラと降ってくることがある。

また、雲の底からじょうご状の雲が垂れ下がっていたり、飛行機に乗っている時に気圧の変化を耳で感じるのと同じ感覚を覚えることもある。それぞれが竜巻の予兆のひとつである。

その後、黒い雲が地面から立ちのぼり、渦を巻きながら移動する。大型の竜巻が発生すると、建物の屋根や自動車が吹き飛ばされ、列車が横倒しになることもある。

また、上空へ巻き上げられた物体は、通過地点に次々と落下し、大きな被害を与える。そして最後に、竜巻は降雨とともに数十分で収束する。

竜巻のように突然襲ってくる災害は、事前の避難が困難である。そのため、竜巻に襲われた際に身を守る方策を知っておく必要がある。

まず、竜巻が近づくと気圧が急に下がるため、窓ガラスが割れることもある。そこで雨戸やシャッターを閉め、カーテンも閉めておく。2階にいる場合は階下へ移動し、机の下に潜って毛布などで頭を守る。

また、屋外にいる場合には、近くにある鉄筋の建物内へ直ちに避難する。

もし車の運転中であれば、風が強くなる橋や陸橋に近づかないようにすることが大切である。同時に飛来物にも注意が必要だ。

気象庁は竜巻が今から発生する可能性をリアルタイムで推定して「竜巻発生確度ナウキャスト」として発表している。一人ひとりが身を守るために活用したい。

『災害列島の正体――地学で解き明かす日本列島の起源』(扶桑社)

鎌田浩毅
1955年東京生まれ。東京大学理学部地学科卒業。理学博士。通産省(現・経済産業省)を経て1997年より京都大学大学院人間・環境学研究学科教授。京大の全学向けの講義「地球科学入門」は毎年数百人を集め、「京大人気No.1教授」としても名高い。2021年より京都大学名誉教授および京都大学経営管理大学院客員教授。専門は火山学、地球科学。

鎌田浩毅
鎌田浩毅

1955年東京生まれ。東京大学理学部地学科卒業。理学博士。通産省(現・経済産業省)を経て1997年より京都大学大学院人間・環境学研究学科教授。京大の全学向けの講義「地球科学入門」は毎年数百人を集め、「京大人気No.1教授」としても名高い。2021年より京都大学名誉教授および京都大学経営管理大学院客員教授。専門は火山学、地球科学。科学をわかりやすく伝え地震、噴火、台風など自然災害の警鐘を鳴らす「科学の伝道師」として活躍。著書に『大人のための地学の教室』(ダイヤモンド社)、『みんなの高校地学』、『地学ノススメ』(ともに講談社ブルーバックス)、『知っておきたい地球科学』、『火山噴火』(ともに岩波新書)など多数。