巨大地震が起きたとき、それに誘発されるように火山が噴火する可能性が、特に「3.11」以降、懸念が強まっているという。

その際に降り注ぐのが「火山灰」だ。そして、一番やっかいなものだという。その火山灰は、私たちにどのような健康被害を与えるのか。

京都大学名誉教授で地学の第一人者・鎌田浩毅さんの著書『災害列島の正体――地学で解き明かす日本列島の起源』(扶桑社)から、一部抜粋・再編集して紹介する。

やっかいなのが火山灰

富士山噴火で起こる現象について触れたが、じつは一番やっかいなものについて触れておかなければならない。それは「火山灰」だ。

火山がひとたび噴火をすれば、噴石とともに空から降り注いでくるのが火山灰である。この火山灰こそが、富士山噴火が起こった場合、もっとも大きな被害をもたらす存在なのである。

まず、舞い上がった火山灰により交通・運輸に大きな支障がでる。

粉のように細かい火山灰は電子通信機器にも大敵で、思いがけない甚大な被害になる。また忘れてならないのが健康被害だ。さらに農作物や畜産への被害、地球規模で気象への影響も起こる。

以下では火山灰の性質を解説するとともに、起こりうる被害を詳しく見ていこう。

火山灰は「灰」ではない

「灰」と聞くと、タバコや炭が燃えて残る「灰」を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、火山灰は、いわゆる「灰」ではない。