全国で相次ぐクマによる人身被害。福井では、勝山市のこども園近くにクマが出没。園長は目撃時「こっちに向かってきた」と恐怖を語る。このクマは市の判断でハンターに発砲を命じる緊急銃猟で駆除された。けが人などの被害はなかった。
◆「ウォーと向かってきた」
勝山市によると、29日午前7時半頃、勝山市旭町一丁目にある「まつぶんこども園」から園の駐車場にクマのフンがあるとの報告があった。市の職員が確認し「これはクマであろうとのことだった」という。
そして、8時50分頃には―
「警察にも来てもらって、茂みの中にいると心配だと伝えて一緒に見に行ったら、ウォーという感じでクマが出てきた」(園長)
園内の防犯カメラには、その時のクマの姿が映っていた。
その後、こども園の隣の空き家に2頭の親子クマがいることが分かった。
警察は、こども園の周辺半径100メートルへの立ち入りを制限。周辺には、張感が張りつめた。
勝山市が緊急銃猟を判断
そのころ勝山市役所では、クマが周辺住民に危害を加える恐れがあるとして、午前10時15分に市が緊急銃猟を実施する判断を下した。
県内で唯一、10月6日に独自の緊急銃猟のマニュアルを策定した勝山市。そのマニュアルに基づき安全確保を急いだ。
こども園や周辺住民には屋内退避を促し、銃口の先が向く7軒の住民には市職員が付き添い、地区の集会所へ避難させた。
そして、午後0時15分。
パンパンパン
こども園の近くに発砲音が響いた。
市によると4人のハンターが合わせて12発を放ち、空き家の隅に潜んでいたクマ2頭を駆除した。
勝山市の職員は緊急銃猟じについて「市街地の中心部で、なおかつ保育園が隣接していることで非常に危険度が高く、一日留まることも考えて判断した」と話す。
園児をホールに集め読み聞かせ
園児らが屋内退避していたこども園では「ホールのすみっこに0歳から5歳児まで一堂に集め、絵本を読み聞かせしながらなるべく音が聞こえないようにした」という。
周辺住民は「怖い。駆除は仕方のないことやと思う」と緊急銃猟に理解を示す。「まさか自分のところでこんなことになると思わなかった。人に危害がなくてよかった」と胸をなで下ろしていた。
市によると、駆除されたクマは体長が1メートル20センチの推定5歳の雌と体長が80センチの推定1歳の雌で、このクマや緊急銃猟による住民の被害はなかった。
