近年、日本列島では気象災害も頻繁に起きている。
「ゲリラ豪雨」「線状降水帯」という言葉を耳にする機会も増し、さらに「竜巻」に関する報道も増えてきた。
京都大学名誉教授で地学の第一人者・鎌田浩毅さんの著書『災害列島の正体――地学で解き明かす日本列島の起源』(扶桑社)から、これまで起きた日本での竜巻被害と予兆について一部抜粋・再編集して紹介する。
意外と日本でも多い竜巻被害
最近の日本では竜巻の被害報道が多くなった。竜巻とは上空にある雲から、じょうごの形をした細長い雲が地表まで達して、突風をもたらす現象である。
非常に強い渦を巻いた風が吹き荒れ、地上の物を巻き上げる。その結果、通過する地域に大きな被害をもたらす。
竜巻は季節を問わず起きるが、特に台風シーズンの9月に多く発生する。気象庁によれば、2007~2023年の平均で1年あたり約20件(海上竜巻を除く)の竜巻が起きている。

2012年5月6日、茨城県つくば市内で発生した竜巻は死者1人(家にいた中学生)、負傷者37人、全壊家屋89棟、半壊家屋242棟、一部損壊家屋384棟という凄まじいものだった。
竜巻の被害は「藤田スケール」で表す。藤田スケールとは米国シカゴ大学の藤田哲也博士(1920~1998)が導入した竜巻や突風の強度の分類法で、数字が大きいほど風速が大きかったことを示す。
地震で言えば震度のようなものだ。気象学者の藤田博士は、竜巻研究の世界的権威で“ドクター・トルネード”の異名を持ち、「藤田(F)スケール」は世界中で使われている。