火山灰の影響は都市機能にも及ぶ。説明したように火山灰は水にとけず、堆積したところに雨などが降ると、セメントや漆喰(しっくい)のように硬化する性質を持つ。
このため、簡単に洗い流すこともできず、処分も容易ではない。地面に降り積もった細かい火山灰は、晴れの日に舞い上がると、飛散するが消えることはない。
鹿児島県の桜島は、1955年以来、本格的に火山活動が続いており、住民が常に「灰の処分問題」に頭を悩ませてきた。火山灰は住宅や車、ペット小屋にまんべんなく付着し、洗い流せば下水が詰まる恐れもあるため簡単には流せない。

降灰のたびにシャベルで灰をすくって袋に詰め、ほかの場所へ移動させるしかない。特に注意が必要なのは、屋根に積もった火山灰の処理である。
雪下ろしと同様に、火山灰も降り積もるとその重みで屋根が潰れる恐れがあるため、直ちに除去が必要だ。しかし、火山灰は雪と異なり、温めてもとけて消えない。火山灰とは、じつにやっかいなものなのである。
火山灰が与える影響は甚大
火山灰が人体に与える影響は甚大である。火山灰そのものに化学的な毒性はないが、火山灰はガラス質で、顕微鏡で観察すると角が刃物のように鋭く、これが健康被害をもたらす。
火山灰が飛散する範囲の住民には、のどや目の痛み、鼻づまり、咳などの気管支炎症状が生じる。
細かいガラス片である火山灰が目に入ると眼球を傷つけ、まぶたを開けていられないほどの痛みをともない、角膜を損傷し、視力低下や感染症のリスクが高まる。