北陸新幹線の敦賀-新大阪間のルートを再検証する声が上がっています。2016年に与党間で小浜-京都ルートが決定していますが、京都府や京都市が地下水への影響などの懸念を表明し、議論は停滞。その状況下で行われた参院選で、京都選挙区では、計画の見直しを主張した日本維新の会新人がトップ当選を果たし、小浜・京都ルートを主張している北陸新幹線与党整備委員会委員長の西田昌司氏は、2番手での当選という結果に。この結果を受け、西田氏は「米原ルート」を含むルートの再検証を国土交通省に依頼しました。停滞するルート問題の経緯を振り返るとともに、現状を打開するためには何が必要なのか取材しました。
◆参院選の結果受け西田氏が“ルート再検証”を国交省に指示
北陸新幹線与党整備委員会の委員長を務める自民党の西田昌司参議院議員は7月30日、自身のYouTubeチャンネルで次のような発言をしました。
「北陸新幹線の小浜ルート、これに対して米原ルートなどももう一度再検証して報告してほしいという事を国交省に指示した」
西田氏は「米原ルート」の建設費や工期を改めて試算するよう国交省に指示したことを明かしました。「小浜・京都ルート」以外聞き入れなかったこれまでの主張を大きく転換した形です。
西田氏は、7月20日の参院選で再選を果たしたものの、米原ルート再検討を訴えトップ当選した日本維新の会の新人候補に大差をつけられました。
日本維新の会代表で大阪府の吉村知事はこの結果を受け、米原ルートを含むほかのルートの比較検証を求めました。「米原ルートと比較検討したうえで、どのルートが一番適切なのか、そこを判断するべきだ」
◆加熱するルート再検証を福井県知事が“けん制”
8月8日、隣の石川県で開かれた自治体や経済団体でつくる石川県民会議では、現行の小浜・京都ルートについて、年内に課題解決のめどが立たない場合は、米原ルートを含めて検討するように国に求めることを、全会一致で決議しました。
石川県・馳浩知事:
「いつまでも待っていられないということです」
過熱し始めたルート再検証の動き。同日、福井県の杉本知事は定例会見で、こう“けん制”しました。
福井県・杉本達治知事:
「長い経緯があって現在の形になっている。法律や事実関係を全部なしにして白地で物事を議論しようというのは、少し乱暴。まずは乗り換えなしの利便性、ルートが短く近い、という経済性や時間の優位性や国土強靭化の観点を踏まえて小浜・京都ルートが決定されているという事実をなしにすることはあり得ない」
そもそも、敦賀-新大阪間を着工するには5つの条件があり、その中には沿線自治体やJRの同意があります。福井県に加え、滋賀県も米原ルートを求めておらず、JR西日本も従来からの考えを変えていません。
JR西日本・倉坂昇治社長:
「小浜・京都ルートが、お客様の利用状況からすれば望ましいルート。大阪まで直通で結ばれて初めて効果が出るのであって、米原で直接乗り入れすることが難しい米原ルートは私たちも望まない」
◆地元経済界や行政は小浜・京都ルート実現に向けた動き
小浜・京都ルートの早期実現に向けて地元の声を届けようと、8月24日には若狭町内で署名活動が行われました。企画したのは、若狭の経済界の若手でつくる団体です。
署名に協力した人は―
「将来、近くで新幹線に乗れるようになるといいなと思って署名した」
「敦賀延伸の状況を見てみると、いい影響が出ているので、それを小浜まで、さらには京都までつなげることで、さらに福井県に新幹線効果が出てくると思う」
署名活動を企画した未来若手プロジェクトの水江会長は「ルート問題が再検証となったので、そこで振り出しにもどることがないよう、若狭に住む我々としては小浜・京都ルートを切実に望んでいるという民意を届けたい」とその意図を話します。
また小浜市は8月から、小浜・京都ルートの認可・着工を待たずに、新駅が予定されている位置周辺のまちづくり計画の策定に着手しました。
◆県議会議長「小浜・京都ルート以外なら地元負担する気ない」
停滞するルート問題。この状況をどう打破していくのか。
福井県議会の宮本俊議長は、8月に行われた近畿2府7県議長会で「小浜・京都ルート以外なら福井県は1円も負担しない」と発言しました。その真意を尋ねると「小浜・京都ルート以外のルートに決まっても着工5条件の中で地元負担というのは確実にあるが、我々はそれを負担する気は全くない」としました。
さらに宮本議長は、今後やるべき3つのことを挙げました。
1つ目は、与党PTや北陸新幹線整備委員会の早期開催。
2つ目は、「小浜・京都ルート」のメリットを県民にPRすること。
3つ目は、「小浜・京都ルート」実現に向けた全県一区の新たな運動組織の設立。
福井県議会・宮本俊議長:
「県民すべての思いとして北陸新幹線を要望しているということをきちんと政府に分かってもらえるような動きが今後は必要。できることは何でもするべき」
国交省は2026年度予算の概算要求で、敦賀-新大阪間の建設費については金額を示さない「事項要求」とする方針で、小浜・京都ルートの事業推進調査を含む整備新幹線の建設推進・高度化事業として、2024年度と同額の19億2300万円を計上しました。
北陸新幹線敦賀-新大阪間の行方どうなっていくのか、2026年度の認可・着工に向け「小浜・京都ルート」の正念場が続きます。
◆豊岡猛解説委員長の見解
【概算要求で2年連続の事項要求となった事について】
福井県などが求める“2026年度中の認可着工”は極めて厳しい状況。その理由に3つの高いハードルがある。
▼1つ目は、予算。2026年度の整備新幹線に関する概算要求は、来年度も国費804億円とこれまでと同額が計上されたが、その多くは北海道新幹線に充てられる見通しで、北陸新幹線は4年連続の調査費止まりだった。国の概算要求がトータル120兆円と過去最大に膨らみ精査が必要な中、ここから巻き返すには、かなり大きな政治判断が必要となる。
▼2つ目は、ルート問題。「事項要求」から本予算に整備費を計上するには、年内に小浜・京都ルートの詳細なルートや京都駅の位置を決める必要があるが、その前に国土交通省によるルートの再検証が行われる。再検証結果は与党プロジェクトチームが会合を開いて確認するが、その時期については、自民党が総裁選が行われた後、新たな政権の枠組みが決まった後に、という声も出ている。ただ、仮に開かれたとしても年末までに検証結果を確認し、ルートを決定する時間的な余裕はないとの見方も出ている。
▼3つ目は、政権の枠組み。自民党と公明党が少数与党となったことで、どの野党と連立を組むのかが焦点となっている。専門家の間には、日本維新の会が最も政権に近いとの指摘もあるが、維新の会の議員の中には米原ルートを強く推す声もあるため、仮に維新と組むようなことがあれば、議論のこう着状態が続きルートが決まらない事態も想定される。
来年度の認可着工は厳しいという認識を共有した上で活動を強化し、年末までに小浜・京都ルートの詳細を決定する、これに全力を挙げるしかない状況だ。