長野県内ではクマによる農業被害が相次いでいる。辰野町では、8月、畑を荒らされる被害が発生し、所有者が設置していたカメラにはクマの姿が映っていた。中野市でも同じ養鶏場で2度ニワトリが襲われるなどの被害があった。県のクマ対策員はクマを引き付ける「誘引物」をなくす対策が大事だとしている。
クマが現れ…トウモロコシ食べ散らかす
「こういうの食べた跡ですね、みんなクマ、これ食べたの」
住民が見せてくれたのは、畑の上に散らばる、スイートコーンのかす。クマが食べ散らかしたものだという。

被害があったのは、辰野町の北大出地区の山あいにある畑。
畑の所有者が作物の成長記録のために設置したカメラ映像をみると、8月14日午後11時ごろ、ゆっくりと黒い動物が現れた。クマだ。

そのまま50分ほど畑にとどまり、姿を消した。
畑ではスイートコーンを30本ほど育てていたが、そのうち約20本が食い荒らされていた。
1m越えの成獣か
住民がクマによる被害にあったのは初めてといい、「夜はあまり外に出ないようにしてます。夜も活動しているようだから」と話した。

畑の所有者からの連絡を受け、町は26日、猟友会や県のクマ対策員などと対策を検討するため、畑やその周辺を点検した。
県クマ対策員は写真から大きさを推測し、「1m越えなので、成獣かな」と話した。
目撃件数は前年を上回る
町内では2025年、クマによる人身被害は発生していないものの、6月以降、目撃や足跡の情報が増えていて、26日までに34件寄せられ、すでに2024年1年間の27件を上回っている。
点検では、クマを引き付ける「誘引物」や隠れやすい場所の有無などを確認した。

県クマ対策員は、畑に出没した個体は今後も出没の恐れがあると指摘する。「人がいない夜間にスイートコーンを腹いっぱい食べた成功体験をしてしまうと、痛みも感じず、誰にも追い払われず安心して食べられたとなると、他の所にも次々現れてしまう」と話した。
同じ養鶏場が再び襲われ23羽が被害
農業被害は、中野市でも。25日、大俣地区の市民農園で、トウモロコシ10本から15本ほどがクマに荒らされているのが見つかった。畑の使用者から「トウモロコシが食い荒らされていて、足跡があり、クマのようだ」と警察に連絡があったという。

また、畑から南東に1キロメートルほどの養鶏場では、8月14日にニワトリ23羽がクマに襲われたという。

養鶏場では、7月26日にも26羽が襲われていた。
クマは発見には至っていないという。
9月中旬ごろまでは特に注意
県によると、山の中でエサとなるドングリが実り始める9月中旬ごろまでは、クマがエサを求めて人里に近づく可能性が高いという。

被害を防ぐためには、農作物を早めに収穫したり、電気柵を設置するなどを呼びかけている。また、食料品を屋外に置かないなど「誘引物」をなくす対策も心がけてほしいとしている。
県クマ対策員は「外に食料は一切置かず、室内に保管してください。家の中からいい匂い、例えば夕食に作ったカレーの匂いが漂っていたら開いている窓から入ってしまうことも考えられます。夜間はしっかり窓の戸締りをお願いしたい」と注意を呼びかける。
(長野放送)