山形・酒田市特産の刈屋梨(かりやなし)が間もなく収穫の時期を迎える。産地の刈屋地区は、2024年に豪雨の被害があったが、ことしも猛暑と水不足という厳しい条件が続いた。産地の今を取材した。

鳥海山のふもとの恵まれた環境で育まれた山形・酒田市特産の刈屋梨
鳥海山のふもとの恵まれた環境で育まれた山形・酒田市特産の刈屋梨
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豪雨の次は少雨…生産者をほんろうする天候

酒田市特産の刈屋梨。
主力品種の「幸水(こうすい)」は約2週間で収穫の時期を迎える。

8月下旬に収穫される甘くてみずみずしい主力品種「幸水」
8月下旬に収穫される甘くてみずみずしい主力品種「幸水」

2024年7月の豪雨で、刈屋地区を流れる荒瀬川からあふれた水や土砂がナシ畑に押し寄せ、収穫直前の果実が甚大な被害を受けた。

春に白い花がいっせいに咲き誇る刈屋地区のナシ畑は川沿いに広がっていて、その畑に川の水が押し寄せた
春に白い花がいっせいに咲き誇る刈屋地区のナシ畑は川沿いに広がっていて、その畑に川の水が押し寄せた

ナシ農家歴50年の酒田市刈屋地区の小松賢さんの園地は、一部で泥が約30センチたい積したが、ことし幸いにも例年通りナシを作ることができている。

小松さんの園地は、復旧作業の末、例年通りの面積でナシの生産ができている
小松さんの園地は、復旧作業の末、例年通りの面積でナシの生産ができている

しかし、天候はことしも生産者にとって厳しいものとなった。

刈屋地区では、8月に入ってからの雨まで1カ月以上雨が降らず、土が乾いてしまい生育が伸び悩んだ。

去年は豪雨、ことしは高温少雨…2年続けてナシ農家には厳しい天候
去年は豪雨、ことしは高温少雨…2年続けてナシ農家には厳しい天候

刈屋梨農家・小松賢さん:
先週の雨は恵みの雨だと思ったが、その前が照りすぎていて玉伸びしていない。
通常だと7月10日すぎから1日1ミリぐらいずつ大きくなるが、それが0.8ミリぐらいしか肥大していない。

1カ月以上雨が降らなかったため、果実の生育が伸び悩んでいると語る小松さん
1カ月以上雨が降らなかったため、果実の生育が伸び悩んでいると語る小松さん

カメムシ大発生で収量2割減る見込み

さらに追い打ちをかけるような試練も襲っている。

7月上旬ころ、カメムシが大発生した。
2024年の豪雨で被害があった川のほうの畑が最初にやられた。一部で全滅した畑もある。

カメムシ大発生と去年の豪雨の因果関係はわからないが、水没した川沿いの畑からやられた
カメムシ大発生と去年の豪雨の因果関係はわからないが、水没した川沿いの畑からやられた

小松さんによると、カメムシがナシの汁を吸うとその場所がへこんだり、スポンジ状になったりするなどして商品にならないのだという。

カメムシの被害は深刻で、小松さんの園地の収量は例年に比べ約2割減る見込み。

カメムシにやられた実は売り物にならない。小松さんの園地の収量は約2割減る見込み
カメムシにやられた実は売り物にならない。小松さんの園地の収量は約2割減る見込み

楽しみにしてくれているお客さんのために

毎年、自然と向き合う農業の厳しさを感じながらも小松さんは前を向く。

刈屋梨農家・小松賢さん:
毎年楽しみにしているお客さんがいて、ことしも刈屋のナシを食べて「おいしかった」と、そういう言葉が聞きたい。
楽しみにしてくれていると思う。

お客さんにナシを届けることを考える時の小松さんの表情はとてもうれしそうだった
お客さんにナシを届けることを考える時の小松さんの表情はとてもうれしそうだった

8月下旬からは主力品種の「幸水」の収穫が始まるが、いま食べても渋みのない果実ができていて、高い糖度の実が収穫できそうだという。

2年続けての厳しい天候を乗り越え、おいしい刈屋梨の収穫・出荷が待ち遠しい
2年続けての厳しい天候を乗り越え、おいしい刈屋梨の収穫・出荷が待ち遠しい

9月中旬には「豊水」が出荷を迎え、収穫は10月いっぱいまで続く。

春の花咲くころのナシ畑もいいが、収穫時期のたわわに実ったナシを眺めるのもいい
春の花咲くころのナシ畑もいいが、収穫時期のたわわに実ったナシを眺めるのもいい

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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