ある日突然、住んでいるマンションのオーナーが外国籍に変わり、「民泊」にする目的で家賃を数倍に値上げし、住んでいる人を追い出す。そんな報告が相次いでいます。

この記事の画像(23枚)

板橋区のマンション住人代表 鮫島さん:
元の家賃が7万2500円、新しい家賃が19万円。8月に値上げすると通告がきた。これはいよいよ我々のマンションが、中国人に売られてしまったんだなと。

騒動の発端となった東京・板橋区にある7階建てのマンション。
オーナーが中国籍企業に変わった途端、これまで7万円台だった家賃を19万円にすると通知が来たことで、住人が反発。

さらに値上げ通知が来て以降、マンション内には外国人旅行者らしき人々の出入りがあり、板橋区も民泊の実態を把握しましたが、民泊営業として必要な届け出はされていませんでした。

各メディアでも大きく報道され、6月には国会で取り上げられたことで、値上げは撤回されたものの、その後も“新たな問題”が続いているといいます。

「サン!シャイン」が現場を訪れてみると、朝の6時前にも関わらず、マンション内のごみ置き場から、回収場所へごみを運ぶ住人の姿が…。

――なぜゴミを運んでいるんですか?
マンション住人:

このマンションの管理がされていない、管理が放棄されていて…。清掃の方(業者)もいないので、住人たちでやっています。

5月中旬までは清掃業者がごみの移動や、マンション周辺の清掃などを行っていたといいますが、現在は全て住人が行っているといいます。

マンション住人:
管理費を払いながら、自分たちで掃除しているんですよ…頭にきてますよ!
エレベーターの点検もされていませんし、消防設備の点検もないですから。ちゃんと管理費を皆さん払っているんですけど、それで何もされていないということは、悲しいを通り越して怒りしかないですよ。

マンションの住人によると、ごみ出しや清掃だけでなく、防災システムや共用部分の管理業務なども停止するなど、マンションの運用が事実上機能していない状態になってしまっているといいます。

住人代表 鮫島さん:
マンションの管理が全て停止している状態です。エレベーターの点検も一切されておりません。

一時は運転を停止していたものの、問題が大きく取り上げられたことで運転を再開したエレベーター。しかし、エレベーター内の点検記録を示す表示を見ると、有効期限は6月で切れていました。このマンションの7階に住む70代の女性は…。

7階の住人(70代):
エレベーター使わないと、私、膝が痛いから。もう階段上るのはね…苦痛でしかない。
熱中症に気をつけないとダメだわね。お願いだから、そのベランダから縄でもいいから下げて私を乗せて引き上げてほしいわ。

引っ越し決意するもオーナーと連絡取れず

様々な問題が改善されない現状に、住み続けることを諦めたという住人もいます。

引っ越しを決めたマンション住人:
今月(7月)の20日に引っ越しを決めています。東京ちょっと怖くなっちゃったので、もう東京を離れて違う職場に行くことになりました、中部地方の方に。東京で賃貸は無理だって分かりました。

しかし、ここでも障壁が立ちはだかります。
オーナー側と一切連絡が取れず、いまだに引っ越すことすら伝えられていないのです。退去時の立ち合いや、カギの返却など必要な手続きが進まず、困惑する女性…。

引っ越しを決めたマンション住人:
(連絡は)取れていないです。ショートメッセージで知らせたんですが、いまだに開封の形跡はありませんし、電話をかけても留守電になってしまうので、私が引っ越しをすることも把握しているのかわかりません。
引っ越した後でも(オーナー側から)「家賃が振り込まれてない」ですとか…。部屋を見にきていただけないので、もし、(引っ越し後)荒らされて、その修理費の追加請求などがあった場合は、どうしたらいいんだろう?とか…。とにかくもう心配ばかりです。

「サン!シャイン」は、連絡が取れないというマンションオーナーと管理会社に取材を試みましたが、どちらも応答はありませんでした。

このまま貸主と連絡が付かない場合、退去時にはどのような点に注意しなければいけないのでしょうか?

不動産問題に詳しい福原啓介弁護士によると、オーナーと連絡が付かない状況で引っ越す場合は、オーナーに「内容証明郵便」で、退去日などについて事前通達することが重要だといいます。
部屋のカギについては、法務局に相談し、「物品供託」を利用し、さらに退去時には、部屋の状態を記録しておく必要があるといいます。

外国人による不動産投資に詳しい
不動産コンサルタント 長嶋修氏:

(退去するとき)最後に、敷金を精算するときに「どこを直します」という根拠がどうなるかと…。ベストなのは、入居時に写真を撮っておいて、入居時と私が引っ越すときはこうだったと、ビフォアー・アフターを写真に撮っておけば、より正当性を示す根拠になると思います。

「固定資産税」の支払いは?住人集団訴訟へ…

現在、オーナー側と連絡が取れない状態が続いている住人たちに、“新たな問題”が浮上しました。それは「固定資産税」です。

住人代表の鮫島さんによると、東京都宅建協会に相談したところ、「オーナー側がこのまま放置をする場合、おそらく固定資産税を払わないだろう。その場合、負担を居住者が支払わなければならなかった事例が国内であった」と言われたといいます。

実際に、地方税法には、固定資産の所有者(オーナーなど)が不明の場合、その固定資産の使用者(住人など)がいるときは、使用者を所有者とみなし、課税できると規定されていますが、これは今回のケースに当てはまるのでしょうか?

不動産コンサルタント 長嶋修氏:
少なくとも、今回のケースでは、借りている人が課税されるということはないと思います。
地方税法のイメージは「田舎の土地をある法人が持っていて、その法人がつぶれてしまった。しかし、その後その法人の社長だった人がずっと使い続けている。これは悪質なのでこの使用者に課税できるよね」と。また、みなし課税を“できる”ですので、やることもやらないこともできるので、あくまでも行政がこれは悪質だと判断したときに課税するということなので、今回の借主の方々はかわいそうすぎますので、このケースで課税するということはならないと思います。
おそらく宅建協会の方も聞かれたから、一応こういう規定がありますよ、と答えただけだと思いますが。

不動産コンサルタント 長嶋修氏:
最終的に固定資産税を払っていなければ、差し押さえになって、競売になって、そこから固定資産税分を差し引くことになり、その後賃料の行方は、競売で入札した人のものにはなるかなと。

今後、住人らはマンションオーナー側に対し、固定資産税の支払いや管理会社の変更、退去費用やエレベーターの停止に伴う損害賠償請求など、訴訟に必要な書類等の準備を弁護士と行い、集団訴訟を行う予定です。
(「サン!シャイン」7月7日放送より)