学校現場で全国的な課題となっている教員不足。鹿児島市では、教員を目指す学生たちに教育現場について知ってもらうため、現役大学生が学校に出向いて教職員の補助などにあたる独自の取り組みが進行中だ。
若い力を学校現場へ—志學館大学の学校支援ボランティア
教員不足が全国的な課題となる中、鹿児島市の志學館大学では地元の学校と連携した「学校支援ボランティア」の取り組みが広がっている。このプログラムでは、教育を学ぶ大学生が小学校に出向き、授業の見守りや学習支援などを通じて教育現場を体験する。また、教師がより細やかに子供たちをサポートするための補助役としても期待されている。

2025年5月に行われたオリエンテーションでは、各学校の校長や教頭が自ら学生たちの前で熱弁をふるった。
「皆さんが来ると教室の中がざわざわします。女の子たちに聞いたら胸がドキドキしたと言っていました。子どもたちは皆さんが来るのをすごく楽しみにしています」「水泳が苦手という方いますか?苦手な人がいいんです。できない人が教えてできるようになった子どもが目の前に現れたら、この感動は教育の世界じゃないと味わえない」。そんな言葉に、学生たちは心を動かされた様子だった。

人間関係学部3年の西村若夏さんは「先生たちの児童生徒に対する熱い思いがひしひしと伝わってきて、早く行ってみたいと思った」と話す。同じく3年の竹ノ内優海さんも「授業を通してでは、実際の教育現場を見ることができなくて分からないので、行ってみることによって良い経験になると思った」と期待を寄せていた。

教室での一日—関わりから生まれる教育の原点
オリエンテーションで心を打たれた安竹聖那さんは、7月7日に鹿児島市・広木小学校でのボランティアを開始した。中学時代の担任に憧れて教師を目指している彼女は、普段は大学の男子バレーボール部のマネージャーも務めている。
この日は1年生のクラスで、給食の時間と休み時間に担任のサポートを行った。教材の準備や評価がない分、学生ボランティアは子どもたちとの関わりに集中できるのが魅力だ。

「好きな色は何ですか?」「どんな生き物が好きですか?」と次々に質問する子どもたちに、安竹さんは笑顔で応じた。「一番好きなのはカブトムシで、毎年飼っていて、今はクワガタを採りに行こうかなと考えています」という答えに、「カブトムシ飼ってる!」「1匹逃がした!」と子どもたちも目を輝かせた。


安竹さんは「給食を食べていない児童がいたら『食べてね』と声かけしたり、周りがよく見られないと、気を遣ったり思いやる心がないと、教員という職業はうまくいかないと思ったりして」と、この経験から学んだことを語る。
教育現場の未来を支える架け橋に
広木小学校の福留忠洋教頭は「ボランティアが来たことに対する価値を学生にあげたい。自分が将来どんな仕事に就くのかというときに、教職を選んでもらえる可能性が少し増えると思う」と、この取り組みの意義を強調する。
教育実習が「先生になるための訓練の場」であるのに対し、学校支援ボランティアは教育現場の雰囲気や子どもたちとの関わりを通して、教職の魅力を体感できる機会となっている。

ボランティアを経験した学生たちからは、教師の仕事のやりがいを知る一方で、実際の勤務時間や働く環境についても考えていきたいという声も上がっている。
このような実践的な取り組みとともに、学生たちの疑問や不安にも応えていくことができれば、彼らが描く「学校で働く」イメージはさらに具体的なものになるだろう。教員不足という課題に向き合う中で、学校支援ボランティアは未来の教育を担う人材育成の一助となることが期待されている。
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