ソチオリンピックの銀メダリストで、日本の女性アスリートとしては史上最多となる6回目の冬季五輪出場を確実にしている、スノーボードの竹内智香選手、37歳。

競技の最前線を走る竹内さんが下した決断。それは「卵子の凍結」。めざまし8は、いま注目される卵子凍結の最前線を取材しました。

竹内選手が“卵子凍結”を選択したワケ

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竹内智香選手
次(のオリンピックを)目指すなら38歳になっている自分がいるので、卵子凍結が必要なんだなっていう…

近年、キャリアと出産・育児の両立に悩む女性は多く。3人に1人が、結婚、出産、育児などのライフイベントが自分のキャリアにとってマイナスに影響すると考えているというアンケート結果もあります。

女性アスリートとしての岐路に立った竹内さんが選択したのが、卵子凍結でした。

卵子凍結とは、女性の卵巣の中に存在している卵子を取り出し、受精していない状態で凍結する技術のこと。将来妊娠を希望する際には、凍結した卵子を解凍し、受精させて母体に戻すことができます。

「卵子凍結」は、がんなどの患者が治療後も妊娠できる能力を保つために行うものと、健康な女性が加齢による卵子の老化を懸念して行うものの、2種類に分かれます。後者については、倫理的な観点や母体へのリスクなどの懸念から、医師の間でも認める否かの判断が分かれています。

竹内選手も決断までには葛藤があったといいます。

竹内智香選手
自然の原理に逆らったことをしていることに対してそれが正しいことなのかどうなのか、とか、すごく色んな事を考えさせられる時間で。今どんなに良い卵を取っておいたとしてもそれが必ず子供に繋がるわけではない。100%(妊娠できるわけ)ではないっていう、その上で私はやるっていう風に決めたのでそこは私の責任であると思っているんですね。やっぱりお金では買えない時間が私にとっては次のオリンピック、6大会目のオリンピック、競技生活って考えた時に、例えば洋服を買うとか旅行に行くとかそういうものを減らしてでも卵子凍結をしたいっていうふうに思いました

卵子凍結をする際に一つのハードルとなるのが、費用です。

めざまし8は、卵子凍結にかかる費用を会社の福利厚生として補助する制度を試験的に導入したフリマアプリ大手の「メルカリ」本社を取材しました。

「メルカリ」福利厚生で卵子凍結費用援助

訪れたのは、フリマアプリ大手の「メルカリ」本社。

5月1日から、社員やその配偶者、パートナーの卵子凍結にかかる費用を会社の福利厚生として補助する制度を試験的に導入したといいます。

メルカリ人事部 幸野俊平さん
キャリアを優先することによって、妊娠や出産を諦める状況に対して、ライフプランの選択肢の一つとして補助を会社が用意することで、不安が軽減できるようにサポートをするというものになります

実は、卵子凍結を望む女性にとって大きな負担の一つが、費用です。

健康保険が適用されないため、病院にもよりますが、都内の不妊治療クリニックでは、一般的な採卵数である卵子15個10年間保管した場合、合計で約170万円~185万円かかります。

メルカリでは元々、子供1人に対して200万円まで補助していた不妊治療に関する費用の対象に卵子凍結を加えたといいます。試験的に導入した制度ですが、社員の利用があれば、正式に導入する予定です。

ーー制度を利用したいという社員はいるのか?

メルカリ人事部 幸野俊平さん
想定以上に。当初は数件かなと思っていたんですけれど、それ以上のお問い合わせや申請はいただいています

日本でも卵子凍結を取り巻く環境は変わりつつあります。

“負担を軽減”国内では珍しい凍結卵子保管設備を取材

国内では珍しい大型の凍結卵子保管設備を取材するため訪れたのは、横浜市にあるステムセル研究所。

ステムセル研究所 佐藤英明さん
こちらは凍結卵子を保管するための液体窒素タンクです

高さ1.5mほどの巨大なタンクは、およそ2万4千人分の凍結卵子を集約して保管するための設備で、今月から稼働する予定です。タンク内には、細胞が活動を停止する-150℃以下に保つために液体窒素が入っています。

ステムセル研究所 佐藤英明さん
24時間液体窒素の量ですとか庫内の温度というのも自動で記録されまして、何かあれば担当者がアラートを受けて対処をすることができます

一般的な病院では、気化してしまう液体窒素を看護師などが定期的に補充していますが、こちらの保管庫では、液体窒素の補充や温度管理などがすべて自動で行われます。

はなおかIVFクリニック品川 花岡正智院長
卵子の凍結っていうのは、5年とか10年とかまたは15年とか非常に長いスパンでお預かりするっていうケースがやっぱり出てくるんですね。すぐに出番がないかもしれない卵子に関してはそういった大きなタンクの中で一緒にお預かりして出番を待っているっていう体制が、結果的には卵子凍結にトライする女性のためのハードルを下げていく、費用面で非常に負担を減らしていくっていう結果になってくるかなと思います。

竹内選手語る「卵子凍結」への想い

卵子凍結を行ったことについて竹内さんに話を伺った。

竹内智香選手
どちらかというと卵子凍結することよりも年齢が迫ってくることに対する不安のほうが大きいんじゃないかなって。100%(妊娠が)保証されたものではないけれども、今これだけの事をしておけば、将来どんな結果が待っていても後悔の大小は小さくなっていくのかな…

例えば20代のうちに卵子を凍結して10年間保管すると、卵子は若いままでも母体は30代になります。卵子凍結については、母体へのリスクや採卵手術のリスクなどを懸念する慎重な意見もあります。そういった事情を踏まえた上で、進展する技術の中で、生き方に関わる大切な判断をそれぞれが主体的に決めていくことが求められているのかもしれません。

(めざまし8 6月1日放送より)