JAXA(宇宙航空研究開発機構)の内之浦宇宙空間観測所がある鹿児島県肝付町。この町で暮らす小学6年生が2025年夏、町のイベントで「給食にみんなで宇宙食を食べたい」という夢を発表した。予算など様々な制約を乗り越え夢が実現! 町内の小中学生が喜びを分かち合った。
「将来の夢は宇宙飛行士です」
肝付町立波野小学校6年生・森田羽玖君は宇宙が大好きだ。場所がら、ロケット基地は身近な存在。一番好きなのは「内之浦宇宙空間観測所のイプシロンロケット」なんだとか。
「将来の夢は宇宙飛行士です。無重力だから空飛んでるみたいで楽しそうだし、地球は大気があるからあまり星は見えないけれど、宇宙だったらたくさんの星が見えるから行きたい」と、目を輝かせて話す森田君。実は以前にも鹿児島テレビの取材を受けていた。
母・康子さんは「この子が3年生の夏、夜9時上がったロケットの時」と振り返った。さっそく過去の映像を探してみると…あった! 2022年8月に行われた観測用小型ロケットの打ち上げ。森田君は打ち上げ見学場でインタビューを受けていた。当時小学3年生。「光が反射してすごかった」と感想を話していた。
「給食に宇宙食出して、みんなで食べたい」
そんな森田君にはもうひとつの夢があった。「給食に宇宙食を出して、みんなで食べたいという夢があります。みんなにも宇宙が身近にあるということを感じてほしくて。調べたら宇宙食は衛生管理がすごく厳しい。給食も衛星管理が厳しいから合っていると思った」
森田君は2025年8月、町長をはじめとする大人たちの前で児童たちが政策を提言する「子どもサミット」に参加。「給食で宇宙食を食べれば友達との会話も増えるはず」と思いを伝えた。
その願いを受け止めたのが肝付町学校給食センターの西野間かおり栄養教諭だ。「肝付町の子どもならではの夢のあるすてきな提案だと思った。かなえてあげられたらいいなと思った」と語る。
予算の壁を乗り越えて実現へ
しかし、そこに大きな壁が立ちはだかった。それは値段だ。肝付町の学校給食は小学生1食288円と予算が決まっている。だがカタログに掲載されている宇宙食には300円以下で購入できるものがなかった。ちなみに森田君が食べたいと言っていたハンバーグは3000円! さすがに高すぎる。

そんな中、西野間先生は「スペースブレッド宇宙のパン」に興味を示していた。1人1個ずつと思ったが「食物アレルギーのお子さんもいるし、全ての子どもたちに提供したいので」と残念そう。値段も640円と1食あたりの予算を大きく上回っていた。
こうした困難を乗り越え2026年1月22日、西野間先生が知恵を絞った宇宙食の給食が町内の小中学校で提供された。先生が選んだのは「ライフストック・ムーンショットレモン味」というゼリー飲料。“地球上”でもよく見かけるゼリー飲料の宇宙版だ。
「忙しい宇宙飛行士でも手軽にパッと栄養補給ができるものです。賞味期限が5年あるので防災食としても注目されているそうです」と西野間先生は説明する。
ライフストックムーンショットレモン味は1パック100グラム入りで税込378円。このままでは予算オーバーだが、パウチに入ったゼリーを使ってフルーツポンチにすることで、みんなで食べられるようになった。
アイデアと愛情たっぷりの“宇宙食給食” みんなで宇宙を体験
「今とてもうれしいです」と森田君。1人あたりの宇宙食はわずか10グラムだが、それでも森田君の思いがギュッと詰まった10グラムだ。西野間先生はお皿の中に宇宙を感じてもらおうと、マンゴーゼリーは満月に、にんじんゼリーは星形にくりぬいた。
児童たちも「宇宙船の中で飲んだり食べたりしているのかなあと想像がついた」「いい経験になった」「自分が宇宙にいるような気持ちになった」と、おいしそうにフルーツポンチを頬張っていた。
「できれば毎日出てほしい。おいしいから、宇宙食は」と森田君。みんなにとって、忘れられない給食になったようだ。
今回の給食については、現場の先生たちが知恵を絞っていると聞いた肝付町が、特別に購入費を出してくれたという。“宇宙にいちばん近いまち”ならではの粋な計らいである。
将来、森田君が宇宙飛行士になって宇宙でこのゼリーを手にしたら、きっとこの日のことを思い出すに違いない。
(動画で見る▶「給食にみんなで宇宙食を食べたい!」 宇宙少年の夢かなう 肝付町)
