「6時10分前」と聞いて、何時何分を思い浮かべるだろうか。
「5時50分」と即答する人も多いはず。だが、街で聞いてみると、世代によってその答えに驚くようなズレがあった。夫婦や友人、親しい仲にもギャップが潜んでいるかも?
「5時50分?」「6時7分ごろ?」
テレビ新広島の加藤雅也キャスターと岡野唯キャスターに、「6時10分前」の時刻をフリップボードに書いてもらったところ、2人とも「5時50分」を記入した。

「それ以外、あります?」と加藤キャスターは当然のように答えていた。
だが、広島市中区の本通で行った街頭インタビューでは、別の回答も聞かれた。

30代の夫婦に聞いたところ、夫は「5時50分」と即答。すると妻は「えっ!」と驚いた様子で夫を見て、「6時7分くらい」と答えた。
「6時の10分前だと思った」と夫。
「“の”が入ったらそうだけど、“6時10分前”だと…」
夫婦間でも時間の捉え方が異なるようだ。
40代の母親と10代の娘は、そろって「5時50分」と回答。「基本的に“10分前”で区切るから」と、世代を超えた一致を見せた。

70代の夫婦など上の世代では「5時50分」と答える人が多く、感覚のズレは見られなかった。
「相手が6時8分に来たら?」という質問に対し、70代の夫は「それは遅刻」と断言した。
“秒単位”のスマホ事情が影響か
「6時10分前が何時を指すか」という話題から、Z世代との感覚の違いが浮き彫りに。
Z世代とは、1990年代半ばから2010年代前半に生まれた世代を指す言葉で、おおよそ2025年現在で10代半ばから30歳前後の人々が該当。この世代は、スマートフォンやSNSが普及した環境で育ち、価値観がこれまでの世代と異なる点が多いため、社会において注目されている。
そのZ世代同士でさえ、認識が分かれる回答もあった。

20代の友人2人に「6時10分前に待ち合わせしたら?」と尋ねたところ、1人は「6時ごろに行く」、もう1人は「5時50分」と回答。しかし、その違いに驚く様子はない。

「LINEでいつでも連絡が取れるし、秒単位で既読や返信がくる。何分待たせるかも伝えられるから」と理由を語った。
芝浦工業大学の原田曜平教授は、このように解説する。
「Z世代は小さいころからスマートフォンを使っていて、地図アプリなどで正確な到着時間を1分単位で確認することに慣れている。“10分前”という表現そのものを使う機会が少ない」
“10分前”に馴染みがない世代と、 “10分前”が日常に溶け込んでいる世代。時間の捉え方にズレが生じるのは、当然かもしれない。
“待たせる”感覚にも世代間ギャップ
街で「5時50分」と答える人からは、「相手を待たせたくない」という声も目立った。

30代女性は「6時9分だと思う若者もいるんだろうけど、それだと相手が待たされるよね。相手がかわいそう」と言う。70代男性も「私は30分前には着くようにしています。人を待たせるのは悪いという思いがありますから」と話した。

一方で、50代男性からは「時代によって価値観が違う。6時9分に来る若者がいてもいい。時間の認識が違うなら、コミュニケーションが大切」と若い世代に理解を示す意見も聞かれた。
「6時10分前」は「5時50分」なのか、それとも「6時9分」なのか——。
正解は人それぞれだったが、世代ごとの違いを知り、相手への思いやりをもって伝え合うことが、すれ違いを防ぐ第一歩になるのかもしれない。
余談だが、40代筆者の娘は9歳で、Z世代の次の世代・α(アルファ)世代に分類される。
娘の回答は「6時5分とか7分」だった。
「それ以外、ある?」とでも言わんばかりに…
(テレビ新広島)