300年以上続く奇妙な祭りが、福岡・朝倉市で行われた。
「ご利益を頂いて帰ろうと…」
2025年12月2日午後、朝倉市にある大山祇神社では、厳粛な神事が執り行われていた。そして境内には、大勢の人たちが集まっていた。
集まった人たちは、何とも不安な表情を浮かべながらも、どこかワクワクしている様子。「初めてです。ご利益を頂いて帰ろうと思った」と話す女性や「付きがよかったら豊作になる」と話す女性。

またドイツから観光に訪れたという2人の女性は「コメのマスクをして、収穫を祝うお祭りですよね」「文化に触れられて、福岡らしいところが楽しめると思って来ました」と興味深々な様子で話す。

彼女たちのお目当ては300年以上前から続くといわれる『おしろい祭り』だ。

この『おしろい祭り』。この地に残る伝説によると、大山祇神社を『山の神』と呼び、山の神は元来『女の神様』といわれていることから、その『女の神様』が、お化粧をすることを意味する祭りといわれている。
顔に塗った『おしろい』で五穀豊穣を願う
新米を粉にして水で溶いた『おしろい』を顔に塗り、氏子の繁栄と新穀の豊作を神に感謝し、翌年の五穀豊穣を祈願する。全国でも類のない奇習なのだ。
さらにこの『おしろい』は、顔への付き具合で翌年の作柄を占うとされ、家に帰るまで顔を洗ったり落としたりしてはならず、火の中に入れると火事になり、帰って牛馬の飼料に混ぜて飲ませると無病息災といわれている。
次々と白塗りになっていく参加者たち。髪まで『おしろい』が付いて真っ白になった男性は“令和の米騒動”の収束を願っていた。

「来年のコメは、みんなが作るけん、いいんじゃないですか」
そして、取材中の記者の顔にも『おしろい』が塗られていく。「呼吸が、できなくなりそう…」とのことだった。
『おしろい』の付きがいいほど、豊作と言われる『おしろい祭り』。大人は嬉しそうだが、小さな子どもは大号泣。
家に帰るまで洗っても、落としてもいけない『おしろい』。大人から「おうちまでとれんよ、それ」と言われてまた大号泣だった。

参加者たちは真っ白い顔のまま、2026年の豊作と健康を願い帰路についていた。
(テレビ西日本)
