国内有数の温泉地である大分県。「おんせん県おおいた」というキャッチフレーズで知られ、その名の通り、県内には「5086」もの温泉の源泉があり、温泉が湧き出る量はなんと1分間にあわせて291トンである。
源泉数、湧出量ともに日本一を誇る大分県だが、なかでも多くの源泉がある別府市でいま深刻な問題が起きている。

1870年には100℃近くあった温度は1990年ごろには40℃近くに
別府市には年間約680万人の観光客が国の内外から訪れる人気の観光地である。
しかし近年、温泉の「温度の低下」や「湯量の減少」といった問題に直面しているという。
大分県と京都大学などが別府市中心部にある19の源泉の温度を調べた結果、1870年には100℃近くあった温度は1990年ごろには40℃近くに。
その後、少し上昇したが現在も50℃前後に留まっている。そして約100年後には再び40度近くにまで下がると予想されている。

高度経済成長期に大量に源泉を掘削したため 温泉の量が減少傾向に
また、高度経済成長期に観光業が栄え、大量に源泉を掘削したために温泉の量も減少傾向にあるという。
県生活環境部自然保護推進室の羽田野康仁室長は「需要と供給の問題で(湯が)使われれば当然減る。使う量を抑えれば確保出来るということになるので、実際の状況を見てみても使える量が若干増えていたのかなという感じはある」と話している。
別府市内の旅館でも異変を感じていた。鉄輪で90年近く営業する旅館みゆき屋だ。
露天風呂と内風呂合わせて3つの温泉があるが、2年ほど前に一時湯量が減り温泉を利用出来ない時期もあったという。

いまは正常なお湯の量に戻っているが、女将の伊東一美さんは「温泉が無くなったら本当に鉄輪も温泉地は死の町。おんせん県おおいたなので、温泉を大事にして、客に喜んでもらえるいつまでも温泉であり続けてほしい」と今後に不安を感じていた。
どうして温泉の量が減り、温度も下がっているのか。
温泉の仕組みは様々だが、別府市の場合は雨水がマグマ溜まりで温められ、いわゆる温泉となる。
この温泉をとり過ぎると当然、枯渇してしまう。
雨が降れば良いのではと思うかもしれないが、雨水を温める十分な時間が無いと温度が低くなってしまう。いままさにこうしたリスクが高まっている。

100年後の別府市内の温泉の温度は30℃台に?
また湧出量が増えていることについて、京都大学の大沢教授は地熱発電に温泉が活用されていることも要因の1つと指摘。
県などが100年後の別府市内の温泉はどうなっているのかシミュレーションしたデータによると、いまと同じ温泉の量を使い続ければふもとの源泉の温度は下がり続け、80℃近くあった場所がなんと30℃台になる場所もあったという。

温泉は無限にあるものでは無いということを改めて認識
対策として県は昭和の時代に、別府市内で新規掘削を認めない特別保護地域3か所を指定した。
しかし問題が解決しないことから2023年、より温度が高い温泉が流れる「西部」と「南立石」2つの地域での掘削を新たに規制している。
また、地熱発電を行う業者には環境に影響を与えないか確認するため温泉の使用状況をモニタリングすることを条件としている。
温泉は無限にあるものでは無いということを改めて認識するだけでも温泉を守る一歩になるかもしれない。
