後輩や部下、プライベートなどでも人にアドバイスをしようとすると、なんとか解決へと導くために一方的に話してしまうこともあるだろう。

5万人を教えた人気研修講師・濱田秀彦さんによると、アドバイスをせずに本人に答えを考えさせることが効果的だという。著書『仕事で伝えることになったら読む本』(アルク)から、一部抜粋・再編集して紹介する。

アドバイス前にやっておきたいこと

多くの場合、アドバイスをする前には質問をして不足する情報を聞き出します。そうして、相手の状況や気持ちを把握したら、アドバイスするための情報は揃います。でも、アドバイスの前にやっておいたほうがよいことがあります。

それは、相手に答えを考えさせるということ。これも質問を使います。

例えば、「やってみるとよさそうなことは、どんなこと?」と聞きます。このときに気をつけたいのは、ハードルを低めにするということです。「どうしたら解決できると思う?」というのは、ハードルが高く「わかりません」「それがわからないから困っているんです」という展開になりやすいもの。

ここでの質問はハードルを低めに設定するのが、相手から答えを引き出すコツです。会話をサンプルにイメージを作りましょう。

相手から答えを引き出す質問が軸になる(画像:イメージ)
相手から答えを引き出す質問が軸になる(画像:イメージ)
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部下:
経費集計が複雑で難しいです。やっていく自信がありません。
上司:
そうか……、少し自信なくしちゃったか……。
部下:
そうなんです。特に、前任者の作ったエクセルの内容が難しくて。
上司:
確かに複雑だよね。ちなみにどのあたりが難しいと思う?
部下:
データベース関数を使っているところです。
上司:
なるほど。そこは難しいところだよね。やってみるとよさそうなことは?
部下:
時間はかかるかもしれませんが、エクセルの関数を学ぶことだと思います。
上司:
今後のためにもやったほうがよさそうだね。どうやって学んでいこうか。
部下:
まずは、エクセル関数の本を読んでみます。

ほぼ答えが出ました。いつもこのようにうまくいくとは限りませんが、やってみる価値はあります。なぜなら、こうして答えが出れば本人の自己説得は終わっており、解決に向けて行動してくれる可能性が高くなるからです。

つまり、アドバイスをしないアドバイスが最も効果的ということです。とはいえ、このようなプロセスの中で「こうしたほうがよい」という考えが浮かぶこともあります。その場合、どうすればよいかは、次の項で解説します。