目を見て話すのが苦手な人は、相手が正面にいてこちらの目をじっと見ていると、それだけで気詰まりになり、考えがまとまらず、話しにくくなります。

『仕事で伝えることになったら読む本』から抜粋
『仕事で伝えることになったら読む本』から抜粋

そのような場合は、環境を工夫します。例えば、カウンター席のように横に並べる場所を選ぶ、あるいは上の図のように斜めのポジションに座ると、考える時に自然と視線を外すことができるようになります。また、丸テーブルも自然と斜めのポジションに座ることになりますので、同様の効果が得られます。

昨今は目を見て話すのが苦手な人が多いので、相談を受け、アドバイスをする際は、とりあえず並ぶか斜めポジションをとるのが無難です。

会話は相手のスピードに合わせて

次に「(2)相手の話のペースに合わせてあいづちを打つ」とは、相手が話しやすいように、会話のスピードを相手に合わせてあげることです。相手は話しやすくなり、ホンネを言いやすくなります。

「どうやってペースを合わせるか」について、一番簡単なのは話をしている相手の顔の上下に合わせてうなずくという方法です。

相手の顔の上下に合わせてうなずいてみて(画像:イメージ)
相手の顔の上下に合わせてうなずいてみて(画像:イメージ)

人は話をする際、自分でうなずきながらリズムをとります。試しに、ニュース番組でアナウンサーが話しているシーンを見てみてください。かすかにですが、顔を上下させながら話すのがわかります。そこに合わせて、自分もうなずいてみてください。ペースを合わせるよい練習になります。

なお、実際の会話では、「はい」「ええ」「うん」「そうですか」「そうだったの」というように言葉を加える方が自然になりますので、そうしてください。

最後は「(3)共感的に」、これが一番大切です。相談してきた相手が述べる感謝の言葉として「親身になって相談に乗ってもらえた」というものがあります。「親身になって」と、意訳すると「自分のことのように」となります。

そういう意味で共感的に聞くことが大切なのですが、「具体的にどうすればよいか」は難しい問題です。

聞き上手な人は、相手の話を聞いているうちに、自然と相手と一体化します。相手の悩み事を聞いているうちに、相手のつらい気持ちに同調して泣いてしまう人もいます。これは究極の共感力です。ただ、それは天性のものなので、普通の人は真似できません。

そこで、次善の策です。それは、話している相手と同じ表情で聞くということです。相談では相手が困った表情、苦悶の表情を浮かべながら話すことがよくあります。

そのとき自分も相手と同じように、困った表情や苦しげな表情にします。そうすることで、相手の気持ちに少しずつ近づいていける効果が生まれます。この方法は「自分の行動をきっかけに、相手に気持ちを近づける」というものです。

このように、相談の序盤、相手が問題や困りごとを話す場面では、(1)目を見て、(2)相手の話のペースに合わせてあいづちをうち、(3)共感的に聞く、ということを実践しましょう。

『仕事で伝えることになったら読む本』(アルク)

濱田秀彦
株式会社ヒューマンテック代表取締役。マネジメント、コミュニケーション研修講師として、階層別教育、プレゼンテーション、話し方などの分野で年間120回以上の講演を実施。これまで指導してきたビジネスパーソンは5万人超。おもな著書に『仕事を教えることになったら読む本』(アルク)、『「上司に話が通じない」と思ったときに読む本』(かんき出版)、『どんな人とも!仕事をスムーズに動かす5つのコツ』(すばる舎)など多数。

濱田秀彦
濱田秀彦

株式会社ヒューマンテック代表取締役。1960年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業。住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て大手人材開発会社に転職。トップ営業マンとして活躍する一方で社員教育のノウハウを習得する。1997年に独立。現在はマネジメント、コミュニケーション研修講師として、階層別教育、プレゼンテーション、話し方などの分野で年間120回以上の講演を行っている。これまで指導してきたビジネスパーソンは5万人超。おもな著書に『仕事を教えることになったら読む本』(アルク)、『あなたが上司から求められているシンプルな50のこと』『あなたが部下から求められているシリアスな50のこと』(以上、実務教育出版)、『「上司に話が通じない」と思ったときに読む本』(かんき出版)、『どんな人とも!仕事をスムーズに動かす5つのコツ』(すばる舎)など多数。