天皇皇后両陛下は、戦後80年にあたり6月4日から2日間、太平洋戦争の激戦地となった沖縄を訪問されました。「慰霊の旅」には愛子さまも初めて同行し、戦争の歴史に向き合われました。
両陛下「慰霊の旅」に愛子さまがご同行
天皇皇后両陛下と長女の愛子さまは、6月4日から2日間、戦後80年にあたり、戦没者を慰霊するため沖縄県を訪問されました。両陛下の沖縄訪問は即位後2回目で3年ぶり、愛子さまは初めてです。

到着後、まず向かわれたのは沖縄戦の激戦地となった糸満市摩文仁(まぶに)の丘。国立沖縄戦没者墓苑で18万人の遺骨が納められた納骨堂の前に進み、白い花束を手向け深く拝礼されました。

そして、その様子を見守った遺族らに歩み寄り、「どなたを亡くされましたか」などと声を掛け、予定時間を超えて一人一人の話に耳を傾けられていました。

太平洋戦争末期、住民を巻き込んだ激しい地上戦で20万を超える人々が犠牲となった沖縄。県民の4人に1人が亡くなりました。
2025年2月の誕生日会見で「戦争の記憶が薄れようとしている今日(こんにち)、戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や歴史が伝えられていくことが大切であると考えております」と述べられた陛下。

若い世代にも戦争の歴史や平和への思いを引き継いで欲しいという両陛下の強い思いから愛子さまの同行が実現したといいます。
沖縄県平和祈念資料館では、沖縄戦を生き延びた人々が残した証言の展示をご覧になったご一家。愛子さまは当時14歳の証言に真剣な表情で目を通されました。

極限状態の防空壕の中で大声を上げる人を大人が相談して集団で窒息させたという証言に、「本当にすごく壮絶な…」「生きていくために、こういう選択をしなければいけないという、心が痛むことだったと思います」と述べられた愛子さま。沖縄の苦難の歴史を深く心に刻まれました。
ご一家は戦争体験者や戦争体験を語り継ぐ若者たちとも懇談されました。

家族5人を亡くした照屋苗子さん(89歳)が「戦争というのは本当に残酷で悲惨で地獄そのもの」と涙ながらに語った過酷な体験に、愛子さまはうなずきながら耳を傾けられていました。

「二度と戦争が起こらないようにしてほしい」と訴える照屋さんに、陛下は「ご苦労なさいましたね」、皇后さまは「つらい話を聞かせてくださってありがとうございます」と気遣われました。
「豆記者」との再会 愛子さま初めての「提灯奉迎」
この日、那覇市の宿泊先でご一家を出迎えたのは、本土との交流行事に参加した8人の元「豆記者」です。

沖縄の「豆記者」との交流は上皇ご夫妻が始められ、陛下も幼い頃から同席して沖縄の文化に触れてこられました。
平成に入ってからは両陛下に引き継がれ、愛子さまも2歳の時に初めて参加されています。平成28年には、中学3年生の愛子さまも同年代の子どもたちと交流し、庭でバレーボールを楽しまれました。

「バレーボールやりましたね」と元「豆記者」(豆記者経験者)に話しかけられた陛下。 愛子さまは、9年ぶりに再会した大学生に「今もバレーボールが好きなんです」「またやりたいですね」と笑顔を見せられました。

この日の夜、宿泊先近くの公園ではおよそ5000人が提灯を掲げて、ご一家の沖縄訪問を歓迎しました。

愛子さまにとって初めての「提灯奉迎」、ご両親と一緒に提灯を振って応えられました。

陛下は「那覇の町に浮かび上がる 皆さんの提灯の明かりがとてもきれいに見えました」と感謝の気持ちを伝えられたということです。
「対馬丸」の悲劇 3代にわたり心寄せ
翌5日、ご一家は、アメリカ軍に撃沈された学童疎開船「対馬丸」の犠牲者らを追悼する慰霊碑「小桜の塔」に花を手向け拝礼されました。

昭和19年8月、沖縄から疎開先の長崎に向かっていた対馬丸。1500人近くが犠牲になり、そのうち1000人あまりが15歳以下の子供でした。

「対馬丸記念館」で、犠牲となった子供たちのランドセルやノート、筆箱など遺品をご覧になったご一家。続いて「対馬丸」の生存者や遺族とお会いになりました。

高良政勝さん、85歳。対馬丸記念館の元館長です。4歳の時に「対馬丸」に乗船し、自身は生き残ったものの、両親やきょうだい、合わせて9人を亡くしました。陛下は「本当に、いろいろ大変でございましたね」と言葉を掛け寄り添われました。

犠牲者と同世代の上皇ご夫妻はこの事件に心を痛め、平成26年に対馬丸記念館にご訪問。当時、館長だった高良さんが案内役を務めました。対馬丸について、これまで上皇ご夫妻から話を聞いてこられたという両陛下。「ようこそ、おいでくださいました」と出迎えた高良さんに皇后さまは「愛子も連れてくることができて」と話されました。

懇談後、高良さんは「二代の皇族がおいでくださったなと。そしてまた三代目もご一緒されたんで、非常に光栄に思いました」「特に愛子さまがおいでになられたっていうことは非常に大きなことだと思います」と話していました。
「首里城」復元現場もご視察
この日の午後、沖縄伝統の「かりゆし」に着替えられたご一家は、那覇市の首里城公園へ。50年前に開催された沖縄海洋博の企画展をご覧になりました。

海洋博のショーで活躍したミナミバンドウイルカの「オキちゃん」が飼育50年を迎えたことも話題になり、「オキちゃんは元気ですか?」と尋ねられた愛子さま。「今でもジャンプしています」という答えに笑顔を見せられていました。

そして、6年前の火災で焼失した「首里城」の復元作業もご視察。現場で活躍する20 代の宮大工に愛子さまは「女性として大変なことはありますか」などと尋ね、皇后さまも「多くの方々が完成を楽しみにされていますね」と励まされました。

今回の訪問で、多くの人と交流し、戦争の記憶と向き合われた両陛下と愛子さま。苦難の道を歩んできた沖縄の人々に心を寄せ、平和への思いを新たにされました。両陛下は、今後、広島、長崎などにも足を運び「慰霊の旅」を続けられます。
(「皇室ご一家」6月15日放送)