毎週水曜日は急上昇ニュースのコーナーです。今回は備蓄米についてです。安いコメが入荷する一方でコメの卸業者からは悲痛の叫びが出ているようです。担当は森岡さんです。

(森岡紗衣 記者)
岡山県では6月11日から倉敷市のディスカウントストア、ディオで販売が始まり、12日はマルナカの県内一部店舗で販売が開始、6月中旬には岡山・香川の多くのスーパーやドラッグストアなどで備蓄米が店頭に並ぶ予定です。

安価なコメがやっと手に入るとまちでは喜びの声も上がっていますが、その一方で、備蓄米の放出はコメの生産現場にどんな影響を与えたのでしょうか。

11日朝、岡山県で初めて店頭に並んだ随意契約の備蓄米。コメの価格高騰が続く中で少しでも家計の助けになればと多くの人が手に取ります。しかしその陰で、卸業者からは悲鳴が…

(コメの卸業 くりや 徳永真悟代表取締役)
「去年(コメ不足で)1番困った時期に、絶対に店頭から切らさないために販売調整をしてきた。そこに備蓄米が出てきたから(これまでの業務が)押し出された形になる。通常の業務の時間だけでは全然収まらない。残業続きになっている。」

そもそも備蓄米は、災害や不作といった緊急時の食糧確保が本来の目的でした。今回のように価格高騰への対応策として大量に放出されたことは、必ずしも良いことばかりではないと専門家は指摘します。

(岡山大学大学院 環境生命自然科学域 大仲克俊准教授)
「卸業者もJAも消費者に対しいかに1年間安定的にコメを供給するかという枠組みで努力してきている。米価高騰で備蓄米を対処療法として出すことが適切だったかは検証が必要。」

2024年の夏ごろ、「令和の米騒動」と称されたようにコメは店頭から一時姿を消しました。コメ農家や卸業者などの供給計画により品薄状態は早いうちに解消されましたが依然、価格は高止まりしているのが現状です。

(岡山大学大学院 環境生命自然科学域 大仲克俊准教授)
「コメの不足感があった、高くなったことは間違いないが、スーパーにコメがなかったかというとあった。飲食店がコメを切らしていたかというとそれはなかった。そうなったときに一時的な価格のコントロールの観点から備蓄米を出していくということは制度の趣旨から見て適正だったのか」

農林水産省が発表している主食用のコメの収穫量の推移を表したものです。高温障害により、2023年の収穫量が少なかったことが価格高騰の原因の一つと言われていますが、実は単純な収穫量だけを見ると多少減ってはいるものの劇的に減少しているというわけではないんです。

一方で、猛暑は品質面に深刻な影響を与えました。ひび割れなどが生じ、実際に「使えるコメ」が少なくなったことが供給力を低下させた可能性があります。実は収穫量減少だけでは説明できない構造的な問題が浮き彫りになっているんです。

コメの価格高騰の背景にはコロナ禍やこれまでの減反政策が大きく関係していると専門家は指摘します。

(岡山大学大学院 環境生命自然科学域 大仲克俊准教授)
「2020年~2022年がコロナ禍で米価が低迷したコメの作付よりもそれ以外のものを作付けする方向に経営をシフトしせざるを得ない。必然的にコメ農家は担い手が減っているのもあり主食用米の作付けを減らす。そこに2023年の高温障害の問題が出てくると当然コメの供給力は低下する」

さらに、これまでのコメの価格は農家にとってほぼ利益のでない「安すぎる」市場価格だったと言います。

(岡山大学大学院 環境生命自然科学域 大仲克俊准教授)
「機械代も高くなっているし、肥料農薬代も上がっているのでこれまでの米価水準は(農家にとって)厳しいものだった」

備蓄米が店頭に並び、安いコメが手に入ったとしてもそれはあくまで一時的なもの。私たち消費者も今一度、コメについてきちんと向き合う必要があるのかもしれません。

(岡山大学大学院 環境生命自然科学域 大仲克俊准教授)
「主食であるコメは安定して安い方が良い。一方で、それは生産者の生活基盤、経営基盤を毀損させてきたことを我々は認識する必要がある」

備蓄米は少しでも安いコメを求める消費者にとっては一時的に効果的ですが、コメ産業に携わる人にとっては更なる重荷となってしまっているのが現状です。

岡山大学大学院の大仲克俊准教授によりますと「これまでの水田政策が限界にきたということを意識することが重要」ということです。以前のような安いコメを求めるだけではなく生産者の実情も社会全体で考えていくことが求められます。

岡山放送
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