総合型では、大学ごとの情報収集や試験対策、場合によっては海外留学やボランティア活動などを計画的に進めていく必要がある。
しかし、学校側に指導できる教員が不足していることや、財力のある家庭だけが対応できるなどといった経済格差を指摘する声もある。
教員不足と地域格差
「一般選抜だと模擬試験で判定が出るので、本番前にある程度の生徒の立ち位置が見えますが、総合型選抜は偏差値の概念がなく、評価基準も明確ではありません。
学校の先生方にとっては『この生徒が受かって、なぜこの子は落ちたのか』を分析する時間がない上に、小論文を専門に教えられる人材も不足しています。合否の要因がわからない点が大きな不安要素になっているのだと思います」

また、総合型選抜に対応した塾が都市部に集中しているといった地域格差の課題もある。
この点については、都市部の方がサポート体制が整っているのは事実だが、生徒に目を向けた時、地方出身者の方がSDGsの問題を身近にとらえ、課題解決に向けて活動しやすい環境にあるのではないかとの声もある。

「日本の経済力が低下し、社会が不安定化する中、大学に行って勉強することが本当に正しいことなのか不安に思っている子どももいます。親の世代には馴染みのない入試制度ですが、選択肢は多く持って、温かく見守ってあげてほしいです」
世界が変化する中、受験生を取り巻く環境も大きく変わろうとしている。
拡大する総合型選抜は、こうした社会に対応できる学生の育成と大学の生き残りをかけた改革の一歩なのかもしれない。