備蓄米の店頭価格を6月初旬にも2000円にすると明言した小泉進次郎農水相。この先、日本のコメはどうなっていくのか。Mr.サンデーが小泉農水相を単独直撃し、今後の展望を聞いた。
また、生産者から小売店までを取材し、適正なコメの価格、“備蓄米放出後”のコメ価格はどうなるのか、その行方を探った。
「備蓄米2000円」小泉農水相「不安な方もいるので丁寧に説明」
25日午後4時頃、埼玉・横瀬町でMr.サンデーが直撃したのは、小泉進次郎農水相。
ディレクター:
備蓄米、店頭価格5kg2000円、6月上旬、これは必ず実現していただけますか?

小泉農水相:
これは必ず備蓄米を5kg2000円で店頭に並べられるようにやっていきます。ここは農家の皆さんが非常に心配をしている価格の異常な高止まり。これが続いてしまったら、消費者のコメ離れを促進しかねない。
これを食い止めるために全国で平均4200円、これをまずは冷ましていく。そのためには備蓄米を2000円にしなければいけません。そういった方向で今日も実は埼玉県でコメ農家と話をさせていただいたら、あるコメ農家からは、これ放置したら今以上にコメ(の価格)が上がるかもしれないから、大臣がやっているこの備蓄米をまず2000円で入れて冷ますと。こういったことはよくわかると。なので、安定した価格でコメ作りがこれからもできるように、まずは落ち着かせてもらいたいと、大変背中を押す声もいただいたので、しっかり頑張っていきたいと思います。

ディレクター:
生産者を守る観点も大事だと思うが、生産者からも理解が得られている?
小泉農水相:
もちろん、まだ不安に思われている方いますので、丁寧に説明を続けたいと思います。
ディレクター:
ありがとうございました。
「進次郎さんやるでしょう」“2000円備蓄米”に期待
24日、東京都内のスーパーの店内では、コメ売り場の前を素通りして行く女性が…。話を聞くと、自宅の米びつは“空っぽ”だという。
買い物客(90):
(今は)おそばを茹でて食べています。
それなのに、コメを買わなかったのは、価格が高いからだけではなかった。
買い物客(90):
進次郎さんやるでしょう、きっと。
――2000円の備蓄米がお店に並んだら買う?
(5kg2000円の備蓄米は)買う。
また、別のスーパーでも、米売り場を見ていた客が、買わずにレジに向かった。

買い物客(79):
2000円台になるまで待ってようかと思って。(収入は)年金だけだからね、しょうがないなって。
23日に小泉農水相が打ち出した「備蓄米の店頭価格5kg2000円」計画。早ければ6月上旬には買えるとのことで、その時までコメの購入を待つという。

現在、全国のスーパーで売られているコメ5kgの平均価格(5月5日~11日)は4268円。備蓄米が2000円となれば、約半額になる。
小泉農水相:
今まで備蓄を扱っていただいた集荷業者の方いますけども、残念ながら店頭に並んでいません。十分には。こういったことを考えたら、今までと違うプレイヤーにもお任せをして、そこでどれだけ早く棚に並べられるか。

そもそもコメは、生産農家からJAなどの集荷業者に集められ、卸売業者を経て小売店に並ぶ。小泉農水相によると、今後は備蓄米の価格を国が決め、小売店に直接売ることで、5kg2000円を実現させるという。
だがこれは、あくまで備蓄米の話。現在、約70万t残っているとみられる備蓄米だが、国内で消費されるコメは、月に約59万t。
近い将来、備蓄米が尽きた時、その後のコメ価格はどうなるのか?
24日、自民党の森山幹事長は…。

自民党・森山幹事長:
安ければいいというものではない。再生産をしていただける価格こそが、我々が目指すべき方向性であると。
そして、小泉農水相も…。
小泉農水相:
今後やはり農家の皆さんが意欲を持ってやっていくために必要なことは、生産者と消費者の方が同じ共通の理解を持って、安心して農家の方が再生産を可能として、これだったらやっていけるっていう適正価格はどこなのか。

スーパーでのコメ5kgの平均価格は、2024年5月までは約2000円で、そこから右肩上がりを続けてきた。はたして適正なコメの価格は?そして、実際“備蓄米放出後”のコメ価格はどうなるのか?Mr.サンデーは、生産者から小売店までを取材し、その行方を探った。
小売店から見た適正価格
24日に横浜市のスーパーを訪ねると、コメの価格はいずれも5kg5000円台。
スーパーセルシオ和田町店 食品バイヤー 久保田浩二さん:
もう昨年と比べても倍以上の販売価格まで上げざるを得ない。仕入れ価格の高騰が進んでしまっているので。
では、小売店の立場から考えるコメ5kgの適正価格は?

スーパーセルシオ和田町店 食品バイヤー 久保田浩二さん:
本当だったら、昨年(と同じ)2000円台で5kgのお米が買えるのが一番好ましいとは思いますけど、現実的な値段での、本当に理想は3000円台でとは思っていた。うちの店だともう2㎏という形で1回の支払う金額を少しでも抑ようというお客様が増えている。
お客が買いやすく、生産者らも無理のない価格は3000円台だという。
JAから見た適正価格
生産者からコメを集める集荷業者のJAは、適正価格をどう考えるのか?
取材を受けてくれたのは、茨城県内にあるJAの米穀担当者。基準は、生産者からコメ1俵60kgをいくらで買い取るかだというが…。
茨城県のJAの米穀担当者:
我々としてみればですね、農家さんにはコメ60kg2万円を払いたい。そうしますと5kg精米価格で言いますと1850円くらいになりますので、それに(卸売業者などによる)流通経費を1150円とかなれば、コメが3000から3500円くらいが適正価格じゃないかなと思っております。

現在、このJAが取引しているコメは、5kgの店頭価格が4300円ほどだが、適正価格は3000円から3500円だという。
理想と現実の差。そもそも取材を受けた理由はそこにあるという。コメの店頭価格が高騰していることについて、JAの職員が主張したのは…。

茨城県のJAの米穀担当者:
今年の流通経費ということになりますので、経費的には去年の3倍近い値段ということもありまして、かなり高くなってるなという思いは強いです。
我々が出荷している価格と(小売り)店頭価格がものすごく高くて乖離(かいり)がある。疑問を持ってましたので、それで今回、一言でも言わせて頂ければと思いました。
卸売業者から見た適正価格
JAと小売店の間にいるのが卸売業者。なぜコメ価格が高くなるのかについて、取材に応えた群馬県の老舗卸売業者は…。
金沢米穀販売 金澤富夫代表:
産地に農協(JA)と同じようなことをしている商人系の業者さんというのがいるんです。商人系の方はスポット取引といって、その時の需給バランスに応じてべらぼうの高い金額で出しているのがスポット取引なんで、それがもう今、4万5千円、5万円するわけですよ。1俵60㎏当たり。
JAとは別の業者による流通ルートも存在し、価格を上げている可能性があるという。では、この卸売業者が考える適正価格は?

金沢米穀販売 金澤富夫代表:
過去の(5kg)2000円いくらとかと比べれば高いですけど、コメ農業を守っていくためと物価高だからお米も上がるのも申し訳ないけど、消費者・農家の双方を考えると3000円ぐらいというところが落としどころじゃないかなと思うんですけどね。
生産者から見た適正価格
最後に話を聞いたのは、長年、茨城県でコメを作ってきた生産者。飛田邦夫さん(82)は、2年前にコメ作りを辞めたという。当時はコメ価格が5kg2000円弱。生産者への収入が低く、経営が行き詰まったという。
そこで、考える適正価格は…?
農地面積20ha・大規模専業農家 荘司恒夫さん(75):
3000円台だよね。(5kg)3000円以下では、やっぱり農家も存続するのは大変だと思うし。

5kg3000円台。消費者が納得できる価格帯を考え、こう答えてくれたというが、生産者にとっては現状を維持できる最低ラインで、余裕は持てないという。
農地面積2ha・小規模専業農家 遠西忠夫さん(76):
これは古いからね。コンバインは1500万とか2000万とかするから、とても買えないですよね。

農地面積20ha・大規模専業農家 荘司恒夫さん(75):
農家を守っていく、切り捨てる。この瀬戸際だと思う、はっきり言って。

今回、取材に応じてくれた4者とも、5kg2000円台だと安く、3000円台が適正価格だと答えた。ならば、その価格に下がらないのかとも思ってしまうが、卸売業者は…。
金沢米穀販売 金澤富夫代表:
そうは下がらないですよ、みんな高値で買いあさってますから。田植えする前から買いあさってるわけですから。
小売店の見立てでも…。
スーパーセルシオ和田町店 食品バイヤー 久保田浩二さん:
次の新米がまだ刈り入れもされてないような状態の中で、もう(集荷業者による)取り合いが始まって、どんどん価格も釣り上がっているというような状況、情報を耳にしている。全然安くならない見込みだろうなと。
すでに新米の争奪戦が起きていて、しばらくは価格が下がらない可能性があるという。

スーパーセルシオ和田町店 食品バイヤー 久保田浩二さん:
流通のシステムの問題ですとか、農政の問題とか、いろんな問題を解決していかない限りは難しいとは感じますね。
ただしJAによれば、価格が下がり始めると期待できるタイミングもあるという。

茨城県のJAの米穀担当者:
今、全国的にもですね、コメの生産量は上げるというような話がありますので、コメの流通量が今年の暮れから増えますので、ある程度価格が下がる見込みはあるのかなとは思っております。
(「Mr.サンデー」5月25日放送より)