給食に提供された離乳食のリンゴを喉に詰まらせ園児が重体となった事故から2年

愛媛県新居浜市の保育園で、当時生後8カ月の男の子が給食のリンゴを喉に詰まらせ重体となる事故から2年。

男の子は現在も意識不明の状態が続く中、事故が起きた園では今どんな再発防止策が行われているのか。

現在も意識不明の状態が続く田村康至君
現在も意識不明の状態が続く田村康至君
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田村康至君(当時8カ月)は給食に食べたリンゴを喉に詰まらせ一時心肺停止に

2023年5月16日、慣らし保育中だった新居浜市の認可保育所、新居浜上部のぞみ保育園で当時生後8ヵ月の田村康至君が、給食で出されたリンゴを食べた直後に呼吸困難となり一時心肺停止の状態になった。

事故検証委員会の報告書によると、食べたのは長さ7ミリ、厚さ3ミリほどの刻んだ生のリンゴで、康至君は病院に運ばれましたが低酸素脳症となり事故から2年が経った今も意識は戻っていない。

給食で康至君が食べたリンゴ(保育園提供)
給食で康至君が食べたリンゴ(保育園提供)

両親は24時間体制で在宅看護を

事故後、康至君は200日以上にも及ぶ入院のあと両親は24時間態勢で在宅看護をするためにそれまでの生活を変えた。

母・早希さん:
「2時間に1回体の向きを変えてあげる体位変換と合わせて、痰の吸引が必ず2時間に1回あるんです。」

気管切開して人工呼吸器をつけている康至君。痰が詰まって呼吸をさまたげないように、2時間ごとの吸引は欠かせない。人工呼吸器を外して専用のカテーテルを吸引機につないで気管内にさしこみ、圧力を調整しながら15秒ほどで手早く痰を吸い出す。

痰が喉に詰まり呼吸をさまたげないよう2時間ごとに吸引
痰が喉に詰まり呼吸をさまたげないよう2時間ごとに吸引

事故検証委員会が指摘した問題点は

事故検証委員会 岡田恵委員長
「本日、承認となりました、事故検証委員会報告書について市へ提出します。」

2024年3月有識者などで作る検証委員会は、事故の報告書を新居浜市に提出した。

報告書では、園の問題点として「国のガイドラインの内容が職員に浸透しておらず、生のリンゴの提供が重大な誤えんリスクにつながる可能性があるという認識が低かった」ことや、119番通報の際、消防が指示した「胸骨圧迫が呼吸補助と異物除去に有効であるという認識がなく」、行われなかったことなどがあげられた。

2024年3月 事故検証委員会が新居浜市に報告書を提出
2024年3月 事故検証委員会が新居浜市に報告書を提出

園が取り組む再発防止策は

テレビ愛媛は事故が起きた新居浜上部のぞみ保育園に「離乳食を提供する際、具体的にどんな再発防止策を実施しているか、緊急時の対応訓練をどのように実施しているのか」取材を申し込んだ。

新居浜上部のぞみ保育園は事故後の再発防止策を書面で回答
新居浜上部のぞみ保育園は事故後の再発防止策を書面で回答

新居浜上部のぞみ保育園の回答

園からは書面で回答があった。

新居浜上部のぞみ保育園の書面回答より

【離乳食の提供について】
▽「0歳児の離乳食はもちろん1・2歳児の新入児については、栄養士立会いのもとで面接を実施。」

▽「保護者に来園していただき、その際、実際に提供している離乳食や及び給食の形状や大きさ・柔らかさを確認してもらった上で我が子に食事を食べさせてもらう。」

▽「その食事見学の際には、クラス担任、栄養士、主任もしくは園長が立ち合い、食事量と自宅での様子を聞きながら進め、食べられることを確認したら翌日から給食を提供。」

▽「途中入所児は面接時に新入園児については入園式で説明していますが、保護者が離乳食の事故のことを知っているため、気持ちよく協力してくれている。」

【救急対応について】
「▽乳児の心肺蘇生人形を購入し、1か月~2か月の間に1回、予告なしに緊急対応訓練を行う」

心肺蘇生人形を購入し予告なしに緊急対応訓練を行う
心肺蘇生人形を購入し予告なしに緊急対応訓練を行う

強い決意を持って再発防止の徹底に取り組む

園の運営責任者である社会福祉法人・新居浜社会福祉事業協会の理事は「今回の事故を重く受け止め、二度と重大事故を起こさず、今回と同じ思いを誰にもさせないため、法人全体で強い決意を持って、再発防止の徹底に取り組んでまいります」としている。

事故の再発防止誓い取り組む
事故の再発防止誓い取り組む

再発防止訴え両親は発信を続ける

事故から2年。康至君は身長は15センチ伸び、体重も7キロ増えた。

父・敦さん:
「一応20年かそこらは、多分生きれるだろうとは言われているけど、それがいつなのかはやっぱわからないんで、亡くなってもいいように、やっぱり家族の時間を楽しんで、やっぱりいけたらいいのかなっていうところはありますね。」

そして同じ様な事故が起きないように、両親は再発防止に向けた発信をこれからも続けていきたいとしている。

両親は再発防止に向けた発信を
両親は再発防止に向けた発信を

ただ生きる自分たちを見てそれぞれの立場で行動を

父・田村敦さん:
「康至を見ていた保育士さんとかのことも考えると、あんまりこうなんだ、いつまでも映像に映すのも、気持ち的に厳しいのかなっていうところもあるんですけど。
でもやっぱりそこは、しっかり乗り越えていただかないといけない所ではあるのかなって思うので。本当がんばってもらいたいという気持ちが多くて。」

母・早希さん:
「いろんな人の立場とか、目で見てもらってどう感じるかっていうのを、そこから色んな行動に皆さんがうつしてもらえたらそれが一番。」

今に向き合い前に進む
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テレビ愛媛
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