閉山期の富士山における救助費用はどうあるべきなのか?その議論が進展するのか注目されている。きっかけは“お膝元”である富士宮市の須藤秀忠 市長が「個人負担にすべき」と提言したからだ。
閉山期の登山は自粛が呼びかけられているが…
富士山の山梨側は例年9月11日から翌年6月30日まで、静岡側は9月11日から翌年7月9日まで(富士宮口5合目から6合目までは11月上旬まで通行可)閉山期間となっていて、両県とも登山の自粛を呼びかけている。

ただ、閉山期間に富士山に入り救助を要請する人は後を絶たず、4月には山頂付近で体調不良になったほか、アイゼンを紛失したとして山梨県の防災ヘリで救助された中国人大学生が、わずか4日後に置き忘れた携帯電話を取りに行くため再び富士山を訪れ、今後は高山病で倒れたため静岡県警によって救助されるという事態が発生した。
富士宮市長は自己責任を強調
こうした中、富士宮市の須藤秀忠 市長は5月9日の定例会見で、閉山期の登山者について「言うことを聞かず勝手に登っている」と怒りをあらわにし、「遭難すると人命を大事にするという見地から救助にいかなければならない。その費用は莫大なもので、個人負担にするべきだし、自己責任」と発言。
その上で「そういう(山岳遭難救助に関わる)ルールがないので安易に登って救助してもらえる」として、県に閉山期における救助に関するルール作りを要請する考えを明らかに。

富士山の富士宮ルートで遭難事案があった場合、富士宮市消防が救助に向け出動することも多いため、須藤市長は「隊員も命懸け。登山家からすると『山があるから登るんだ』『冒険するのが楽しみだ』ということになるが救助に行く方は大変。富士山を甘く見ている」と語気を強めた。
鈴木知事は国に検討を要望
これを受け、「きちんとルールがあり、(閉山期の登山は)それを逸脱している。その程度や条件にもよるし、救助はしないといけないと思うが、その際の費用の問題については議論の余地はある」との考えを述べたのは静岡県の鈴木康友 知事だ。

一方で、鈴木知事は法律に関わる部分があることから、「国全体に関わる問題なので、国で課題を整理してもらいたい。ルールを無視した時の救助費用の自己負担の在り方については国でしっかり検討してもらうのが良いのではないか」との見解も示している。
埼玉県は有料化に踏み切ったが…
山岳事故をめぐっては、活動中にヘリコプターが墜落し隊員が死亡したことを受け、埼玉県が2017年に全国で初めて条例により救助の有料化に踏み切り、指定された山や地域において防災ヘリで救助を受けた場合、燃料費に相当する手数料としてフライト時間5分につき8000円を徴収している。
静岡県では救助費用は税金から賄われているだけに、須藤市長の提言をきっかけに議論が進展するのか…その行方が注目されている。
(テレビ静岡)