7人制ラグビーの日本代表としてパリ五輪に出場した男性が、この春、秋田・東成瀬村で社会人生活のスタートを切った。東京生まれ・東京育ちの男性が選んだ生活の場は人口約2300人の村。どんな思いでこの地を選んだのか、その理由に迫る。
東京から自然美しい秋田・東成瀬村へ
東成瀬村を拠点にする企業「東成瀬テックソリューションズ」、通称「なるテック」。村の地域おこし協力隊が2021年に立ち上げた。

社員全員が「地域おこし協力隊」として活動し、地域格差や働いても満足な賃金が得られないワーキングプアなどの村の課題を、IT技術を活用して解決しようと日々取り組んでいる。
2025年度がスタートした4月初め、なるテックを訪れると新入社員が研修に励んでいた。

丸尾崇真さん:
皆さん、こんにちは。きょうは東成瀬村でのトレーニングに関して話したいと思います。東成瀬村を調べても、マッチョからしたらちゃんとしたジムはなくて、でもトレーニングする必要がある。村民が見たこともないぐらい大きい器具を購入して持ってきたので、ぜひ使ってください。
ひときわ大きな体でトレーニングについて熱く語る男性は、新入社員の1人、丸尾崇真さん(26)だ。

丸尾さんは東京生まれの東京育ち。早稲田大学ラグビー部でフォワードのリーダー、ナンバーエイトとして活躍し、大学日本一に輝いた。卒業後は、7人制ラグビーの日本代表として2024年のパリ五輪に出場するなど、世界を舞台に活躍したアスリートだ。
東成瀬村の第一印象について丸尾さんは「東成瀬村は初めて来た。自然が本当に美しいなと思った」と語る。
日本を深く理解し将来に生かすために
村の地域おこし協力隊に着任すると同時に、なるテックに入社した丸尾さん。東成瀬村を社会人生活のスタートの場に選んだのは、ある強い思いがあったからだ。

なるテック・丸尾崇真さん:
ラグビーを通していろいろな国を回る中で、日本が抱える社会問題や将来への不安を感じた。自分がどのように日本社会に関わっていきたいかを考えたときに、田舎に行かずに東京で生まれ育ってずっといることは、日本を語る上で浅い。もっとより深い理解を得るためには、こういう場所に来ることが必要だった。
村の人口は約2300人。
なるテックの代表は、丸尾さんという新しい風による村の課題解決に期待を寄せている。

なるテック・近藤純光社長:
これからの日本をどうしていくか、そのためには地方をどういうふうにしていかないといけないか、ラグビーやアスリートとしてどういうことができるのかという話をずっとしている。アスリートとしての切り口での地域課題解決と、新たな事業の創出にチャレンジしてほしい。
子どもの成長手助けし地域に活気を
東成瀬村は、豊かな自然を生かした取り組みを進めている。

その一つが「仙人修行」だ。自然と向き合い、滝行や座禅などに励んで心と体を鍛えるもので、全国各地から多くの人が参加する。
丸尾さんが担当するのは、仙人修行を外国人観光客にPRするプロジェクトだ。
この仕事と同時に、丸尾さんは村の子どもたちに自身の経験を伝え「子どもたちの成長を手助けしたい」という。

なるテック・丸尾崇真さん:
村に子どもが少ないことや、場所やクラブチームがないことを聞いた。この村から将来的にオリンピアンが出たとすれば「なんでもできるんだ」ということになると思う。手伝えることがあれば、経験を生かして貢献したい。
丸尾さんの活動は村内にとどまらない。
自身が中心となり、秋田の社会人ラグビーチーム・秋田ノーザンブレッツと連携して7人制ラグビーの新チーム「秋田7sチーム」を立ち上げた。

選手としての自身の成長と世界で戦える新たな選手の育成を図り、ラグビーを通じた地域の活性化にもトライする。
東成瀬村を拠点にした丸尾さんの新たな挑戦は始まったばかりだ。
(秋田テレビ)