転職やキャリアの方向性を考えるとき、やりたいことから考えがち。だが、「やりたいこと」を捉えすぎていると、かえってキャリアの選択肢を狭めてしまうかもしれないという。

キャリアと組織開発を専門に活動する、株式会社Your Patronum(ユアパトローナム)の代表・森数美保さん。「やりたいことが見つからない」ことに悩み、新卒から9年間在籍した転職エージェントでも見つけることができなかったと振り返る。

この悩みは多くの人が持っていることも知り、かつ結婚・出産などライフステージが変わり、仕事と家庭の両立という新たな悩みも生まれた。

著書『「何者でもない自分」から抜け出すキャリア戦略~やりたいことがなくても選べる未来をつくる方法~』(日本能率協会マネジメントセンター)では、キャリアの悩みを解決に導きつつ、“やりたいこと探し”をしないでキャリアアプローチする手法を解説している。

「やりたいことがない」ことは決してマイナスではない、というが、では「ない」状態をどのような視点で受け止め生かすのかを、一部抜粋・再編集して紹介する。

今やりたいことがなくてもいい

「やりたいこと」は、ないよりあった方がいいのかもしれません。

しかし、今「やりたいこと」が見つかっていなくても問題ありません。今やりたいと思っていることは、時が経つにつれて変わる可能性が十分にあるからです。

それに、「知っていること」の中からしか、「やりたいこと」は見つかりません。だからこそ、今「やりたいことが見つからない」と焦る必要はありません。

知っていることの中からしか「やりたいこと」は生まれない(画像:イメージ)
知っていることの中からしか「やりたいこと」は生まれない(画像:イメージ)
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ただ、1つ意識してほしいことがあります。

それは、今やっていることに意義を見出す努力です。必ずしもその仕事を好きになる必要はありませんし、得意なことばかりではないかもしれません。それでも、どんな仕事にも、目的や意味があるはずです。

ビジネス界隈ではよく話題になる「3人のレンガ職人」の話があります。

ある日、大聖堂の建設現場を訪れた旅人がいました。その旅人は、同じような作業をしている3人のレンガ職人に出会い、それぞれに「何をしているのですか?」と尋ねました。するとそれぞれ、このように答えます。