新型コロナの感染拡大を機に、ガーデニングや観葉植物に興味を持つ人が増える中、鉢を必要とせず、高い芸術性でインテリアとしても人気の高い「苔玉」。苔玉に魅了された3人の青年が、独自の感性で癒しの空間を演出し、注目を集めている。
苔玉約30種類 珍しいサボテンも
福岡・糸島市で苔玉を栽培し、イベントなどで販売している会社「植物屋」。ハウスの中に足を踏み入れると、広い空間に様々な観葉植物が並んでいる。

「苔玉としてこれだけの種類を扱っているのは、他にないと思う」と話すのは、代表の永渕優さん(25)。学生時代の友人2人と「植物屋」を2年前に立ち上げた。

苔玉とは、様々な植物の根に苔を丸く巻きつけたもの。保水力が高いコケ科の一種、水苔で、植物の根を覆うため、鉢を必要とせずに育てることができる。「失敗しながら、いろんな植物で試してここまで辿り着けた」と永渕さんは、胸は張る。

ガジュマルやクワズイモなど、永渕さんが、試行錯誤して栽培に成功した苔玉は約30種類。

苔と相性がいい植物は限られるため、1年間かけて、根の張り具合や成長具合を見て、きちんと育ったものだけを選別している。

永渕さんが作る苔玉の中でも、サボテンは特に珍しく、客から驚かれることも多いという。

苔玉の1番の魅力は「育てやすさ」
なぜ、苔玉にこだわるのか?永渕さんは、まず、育てやすさを挙げた。「土だと最初は、乾燥しているかどうか、分からない人が多いが、苔玉は、触ったり持ち上げたりするとことで乾燥具合が分かるので、初心者でも適切に水やりがしやすい」とのこと。

そして、見た目の可愛らしさ。丸いフォルムで、糸を巻いて自分なりにアレンジもできる。更に、置きやすいこと。保水力が高いため器に置くだけでOK。吊るすこともできるので、楽しみ方が広がるのだという。

インテリアとしても人気が高い苔玉。永渕さんと会社を共同運営する徳永歩夢さんと三苫裕太郎さんも苔玉の魅力にハマった仲間だ。

元々、永渕さんと徳永さんは、福岡大学商学部の学生で、植物には無縁だったが、コメ農家だった三笘さんの祖父の農作業を永渕さんは、たまに手伝っていた。

そのうち、自分は土に触れるのが好きだと気づき、自分たちの手で何かを「作り出す」ということに新鮮な感覚を覚えたという。
独学で学びながら「植物屋」起業
永渕さんは、大学卒業後、三苫さんと共に農業を始めた。最初は、トマトなどを育てていたが、「自分達のやりたい形じゃない」と思い至ったという。

そして、考えた末に辿り着いたのが、幼い頃から、ずっと身の回りにあった観葉植物だった。中でも、初めて苔玉を作った時に様々な形に自由にアレンジできることに魅力を感じた永渕さんは、三苫さんと大学時代の友人だった徳永さんを誘い、2年前に苔玉を栽培。イベントで販売する「植物屋」を立ち上げたのだ。

この日、イベントの出店準備のため、会場を訪れた3人。主催者の意向を聞きつつ3人は、イベントの雰囲気に合わせて出品する商品やディスプレイを決めていく。

「今回は、古民家の素敵な空間で展示販売させて頂けるので、この環境に合うような“流木で吊るす商品”を多めに持ってきました」と話す永渕さん。イメージ通りの空間に仕上がったようだ。

3人は、自分たちの手で作り出すこと、プロデュースすることにこだわりを持っていて、苔玉を乗せる器なども自分たちで作ってセット販売している。こうした出店方法が人気を呼び、今では県の内外からオファーが殺到。2年間で70以上のイベントに出店してきた。

販売は、これまでイベントのみだったが、5月11日に福岡・糸島市に、夢だった店舗をオープン予定だ。

「僕たちが作る風景も見せられるし、装飾して欲しい人たちが、見やすい場所が欲しいとずっと、思っていた」と話す永渕さん。

苔玉に魅了された若き3人が一つになって取り組む新たな可能性。挑戦は、始まったばかりだ。
(テレビ西日本)