本籍を皇居にする申請が急増し、千代田区役所が対応に追われている。戸籍法改正により全国どこでも戸籍を取り寄せやすくなったことが要因とみられ、人気スポットを本籍にする動きが広がっている。専門家は、オンライン化で本籍の役割が薄れていると指摘している。

「本籍どこでもOK」で皇居希望が殺到

いよいよ春の新生活シーズン。いろんな届け出で役所にお世話になるが、そんな中、首都・東京のど真ん中にある千代田区で、頭を抱える事態が起きている。
それは、「婚姻届」に記入する「本籍」だ。

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東京駅前で午後1時過ぎ、ウェディングフォトを撮影するカップルがいた。

5月に結婚式をするというお二人、入籍は2024年6月に済ませているというが、「本籍」はどこにしたのか聞いた。

去年6月に結婚したカップル:
一緒にこれから住む住所を書いた。地元が遠方なので、お家の方が何かと楽かなと思って。

本籍地は、結婚などで新しい戸籍を作る時に決めなくてはいけない。指定する場所に特に決まりは無く、実在する地番であれば、日本中のどこを指定しても良いという。

記者:
本籍は?

70代:
茨城県、実家です。

記者:
本籍地は、どこでもOKなんです。

70代:
知らなかった。

40代:
主人の実家が本籍です。そもそも本籍地を使うことがほぼない、変える必要もないかと。

青井実キャスター:
柳澤さん、本籍どこでもOKってご存じでした?

SPキャスター・柳澤秀夫さん:
聞いたことはありました。元々自分がどこの出身かを示すものだから、あちこち勝手に決めるのはどうかなと思います。

青井キャスター:
ただ、どこにでもできるなら選びたいなという気持ちも分かりますよね。

千代田区役所で、週末に提出する婚姻届のチェックに訪れた男性に、本籍地をどこにしたか聞いた。

婚姻届の確認に来た人:
本籍は会社の住所を書いた。一番便利かなと思って、忘れないように。人気の本籍地に皇居があると聞いたが、個性を出そうと思い(皇居とは)違う場所にした。

実は、皇居は本籍地として人気で、この影響で千代田区役所では困った事態が起きている。

千代田区地域振興部・近藤係長:
「皇居に本籍を置きたい、千代田区1番地で合っているか?」という問い合わせが毎日来ます。

皇居の住所「千代田区千代田1番1号」を確認しようと、ひっきりなしにかかってくる電話。皇居を本籍とする人は、約3000人おり、全国で一番多いという。 

千代田区では他にも「東京駅」や「丸ビル」などを本籍とする人も多く、千代田区の住民約6万8000人に対して、本籍人口はその3倍以上の約21万3000人もいるという。

その結果、このような事態になっていた。

千代田区地域振興部・近藤係長:
事務の処理が追いつかない。逼迫している。

本籍だけ千代田区という人が増え続ければ、戸籍を管理する負担だけが増加し、業務が回らなくなる恐れもあるという。

オンライン化で変化する本籍地の必要性

なぜ、こんな事になったのか、家系図を専門とする行政書士の渡辺さんは、2024年の戸籍法改正の影響を指摘する。

家系図作成代行センター(株)・渡辺宗貴代表:
以前は自分の戸籍がある役所でしか取れなかったので、戸籍を取るのはかなり手間だった。今、全国どこの役所の窓口でも取り寄せられるようになった。本籍地を自分の居住地と全然別の場所にしやすくなった。

人気の本籍地は、全国各地にもある。北海道では「札幌時計台」、関東では「東京ディズニーランド」、関西では「大阪城」や「甲子園球場」などを本籍とする人も多いという。

こうした事態に、町では様々な声が聞かれた。

60代:
(自治体にとっては)迷惑ですよね。簡素化できないものか。

20代:
(本籍を)移したいとは思わない。(自分の家系の)「ルーツ」みたいなのがあると思うので。

80代:
(本籍が)皇居なんて考えられない。昔の人だったらとんでもないこと、「そんなところに」って、感覚的にね。

30代:
変えられるなら、そしたら東京ドームでしょ。好きなアイドルが東京ドームでずっとライブしてたので、推しを感じられる所がいいな。

専門家の渡辺さんは、デジタル化が進む中、本籍地の必要性も変化しているという。

家系図作成代行センター(株)・渡辺宗貴代表:
オンライン化で、本籍地の役割は特に要らなくなってくると思う。別の方法で戸籍を管理する事が出来るんじゃないかと。

その一方で、古くからの戸籍が残っていることで、約150年前からのルーツをたどる事ができる。文化的な面を含めて、戸籍の管理をどうしていくかという議論は、今後も重要だという指摘もある。
(「イット!」3月28日放送より)

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