麻原のマインドコントロール

捜査報告書より
「教団施設を訪れたオウム被害者の会のメンバーの中に端本の母親がいた。母親から声をかけられ戻ってくるよう求められた端本は無視して施設の中へと消えていった。しかしその後、早川の部屋で泣いていたそうだ。その際に麻原から突然電話がかかってきて『前世は私の息子だ』と言われ慰められたという」

教祖のマインドコントロールの手法も捜査報告書に記載されていた
教祖のマインドコントロールの手法も捜査報告書に記載されていた

90年4月、端本の両親が息子を教団から奪還するため静岡県富士宮市の教団施設を訪れた時のことである。

端本の母親は坂本弁護士一家失踪に関する記事を見せ、すがるように「オウムはこんなこともやっているのよ!」と叫び帰ってくるよう息子に懇願した。端本は無視を決め込んだが、心のうちで「殺害犯は自分なのだと知ったら、母親はどれだけ動揺するだろうか」と思ったという。

殺害された坂本堤さんと龍彦ちゃん
殺害された坂本堤さんと龍彦ちゃん

端本が早川の部屋に戻り泣いていたのは事件後、自分は殺人者になったという自責の念を「あれはポアだったんだ」と必死にかき消そうともがいていたからではないか。

麻原は端本のその葛藤を看破していた。だからこそ「ヴァジラ」=犯罪行為に繰り返し加担させ雁字がらめにする必要があった。雁字がらめにするために麻原は特別、端本に目をかけた節がある。捜査報告書には端本自身が麻原の甘言にほだされてしまったことを認めていることも綴られていた。

捜査報告書より
「取調べで端本本人は『尊師が親父で早川がおじきって感じでした。前世、教祖の息子であったとまで言われ、戸惑いながらもそれを大きな支えとしてきました。今思えば情に脆い自分にとっての殺し文句だったのかと理解しています』と話している」

また早川と端本の間にも特別な信頼関係があったとみられている。