人手不足が社会問題化する中、定年を迎えたシニア社員の待遇を見直す企業が相次いでいる。
働きぶりなどに応じて最大1.5倍ほどの年収アップを可能にしたり、シニア向けの転勤制度を導入するなど、各社の取り組みを取材した。

全員60歳の“新人”が「入社式」

ずらりと並ぶ役員に、続々とモニターに映し出される社員。

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この日、住友生命で行われていたのは、ひと足早い入社式だが、実は全員60歳の新人シニア社員に向けた入社式だ。

住友生命・高田幸徳社長:
皆さんがこれまで以上に生き生きと働く姿を見せていただくことが、後輩や今のメンバーにとって何よりの財産、勇気になると思う。

社長からの訓示も入社式では聞き慣れない言葉も並んでいた。

住友生命・高田幸徳社長:
壮年化・老年化というのは、それぞれ心の持ちようだと思いますけれども…。

出席した新人シニア社員の中には社長と同期入社の人も。

“新人”シニア社員の上村昭彦さん(60):
実は(社長と)同期でございまして、あれから37年たったんだなと思う。しっかり社会や会社に貢献できる自分でありたい。

定年後の再雇用は年収が下がることが一般的だが、この企業ではシニア社員を「スペシャリスト」と呼び、組織での役割や働きぶりに応じて最大1.5倍ほど年収アップが可能だという。

こうしたシニア社員の活用。
人手不足を原因に倒産した企業の数が過去最多となる中、さまざまな企業で見直す動きが加速している。

玩具大手の「バンダイ」は、4月から定年後に再雇用を希望した61歳以上のシニア社員の年収を平均で約6割引き上げると発表した。

“シニア向け”独自の転勤制度導入も

さらに、シニアの挑戦を後押しする企業もある。

あいおいニッセイ同和損保で働く千葉晃久さん(61)は2024年、転勤先の長野で定年を迎えたが、今も家族のもとには戻らず仕事を続けている。

活用したのが、シニア社員に向けた「手あげ転勤制度」。
あいおいニッセイ同和損保では、シニア社員が希望し会社側が認めた場合の独自の転勤制度を4年前から導入している。

あいおいニッセイ同和損保・長野支店地域戦略室 千葉晃久さん:
いろんな意味で社会の維持にも役に立つし、年齢で区切らないで働く前提で健康も維持していくことが有益かなと思っています。

「最後の頼りどころ」同僚も信頼寄せる

シニアとしてのアドバンテージは「人脈」だと語る千葉さん。
一緒に働く同僚はどう感じているのだろうか。

千葉さんの同僚は「最後の頼りどころでもあるし、気軽に相談がしやすい」「新しいことにもどんどん挑戦しているところをすごく尊敬しています」と話す。

同僚からの信頼も厚い千葉さんだが、定年後も長野での単身赴任を継続している。
本音は、家族とゆっくり過ごしたいのではなかろうか?

あいおいニッセイ同和損保・長野支店地域戦略室 千葉晃久さん:
娘がまだ大学1年生なので、大学生活に必要な、お父さんとして(支援する)お金も必要。お金は必要ですが、お金のためだけに働いているわけではない。そういう働き方を許してくれるこの会社が好きです。

人手不足解決へーー。
シニア世代の待遇の見直しは、さらに広がるのだろうか。
(「イット!」3月7日放送より)