未来に見出せば共産主義(左翼)、過去に見出せば復古主義(右翼)ですが、どちらも現実を顧みない極端な主張であることに間違いはありません。
「共同体の価値」とは
保守思想はこういった原理主義的な変化を拒絶します。しかし、現実の変化に適応しつつ伝統を守る「漸進的改革」の必要性は大いに認めるところです。
保守的な思想の持主は変化を嫌うものでも、現状維持を望むものでもありません。むしろ、社会をよりよくするための安定した漸進的な変化を促すべきだと考える人です。
また、保守思想には「共同体の価値」を重視するという特徴があります。家族や地域社会、そして国民国家といった共同体は、個人が生きる上での基盤となる存在です。

そのため保守思想は、これらの共同体を破壊し得る過度な個人主義やグローバリズムに対して批判的です。
国家の役割を重要視し、国民を保護し、国益を守る存在としての国家観を持っています。
とはいえ、それは決して教条主義的なものでも、排外的な原理主義でもありません。伊藤氏は保守思想が理想主義に対して現実主義的である点を強調しています。
人間の理性や計画に基づいて完全な社会を作り出すというユートピア思想には限界があり、むしろ人間の不完全さや限界を前提にした社会を志向するのが保守思想です。
この現実主義は、政策や制度設計においても漸進的で実効性のあるアプローチを取ることを意味します。