「保守思想」とその対比で取り上げられることの多い「右翼思想」。
この違いやそれぞれの思想の本質について深く考えたことはあるだろうか。
日本の歴史的な保守思想の流れを振り返っていく、経済評論家・上念司さんの著書『保守の本懐』(扶桑社)から、一部抜粋・再編集して紹介する。
伝統を尊重する保守思想
保守思想とは何か?あえて言うならば、それは「〇〇でないもの」の共通部分。
共産主義思想で言うところのマルクスのように「教祖」「家元」を持たない思想です。
まずはその一例を示すために保守思想としばしば混同される右翼思想との違いについて説明します。
保守思想は、社会の秩序、伝統、文化を尊重し、次世代に引き継ぐことを目指しています。
歴史的に培われた知恵や慣習を重視し、人間の不完全性を前提に社会の安定を追求するので、急激な変化は警戒されます。
しかし、変化そのものを否定するわけではなく、むしろ漸進的な改革は重視されます。
結果として、保守思想は、自由主義や民主主義と共存しやすく、対話や妥協を通じて社会全体の利益を調整することが良いとされます。
右翼思想とは?
これに対して右翼思想は極端なナショナリズムや盲目的な愛国主義を強く掲げ、自国の優越性や独自性を守ることに重点を置きます。
一瞬、伝統を重視しているように錯覚させますが、実際には己の優越性に溺れ、他国を劣ったものと見なす傾向が強いです。その裏返しで、外敵に対する危機感を異常なまでに強調し、対立的な言説を用いて人々を煽ります。
排他的な政策を急進的に推し進めるよう政府に要求したりもします。
ただし、それがイデオロギー的に一貫しているかというとそうでもありません。それらは感情的、状況的な動機に基づく場合が多く、「極右ポピュリズム」と批判されることも多い。
そういう意味ではとても機会主義的です。また、日本の場合は特に戦時統制の頃を模範とし、そこに回帰すべきだとする復古主義的な右翼も多数います。