そうした時に、ふとボールを軽く放り上げることで、頭が切り替わり、再びピッチングに集中できるようになるという道理でした。

打者との駆け引きに入れ込みすぎないため

マドン監督は、ダルビッシュに打者との駆け引きやピッチングに入れ込みすぎるのをやめさせたかったのです。そもそも、ダルビッシュはありのままで、すでに卓越したアスリートです。

投手としてすべてを兼ね備えているのだから、余計なことは考えずにアスリートらしく、ただ投げてほしかったのでしょう。そこで、彼が能力を発揮するには、別の動作をすれば良いと考えたのです。驚くべきアプローチです。

「ピッチングニンジャ」ことロブ・フリードマンさん
「ピッチングニンジャ」ことロブ・フリードマンさん

私がさらに驚いたのは、ダルビッシュもそうしたアプローチを良くわかっていて、すでに違うことでも実践をしていたという事実です。彼の驚異的な「左投げ」です。

マイケル・キング(パドレスに所属する横の変化が大きく特徴的なスウィーパーを投げる投手)をインタビューした時にも、彼は「その気になればダルビッシュは、MLBでサウスポーとしてもキャリアを築けるだろう」とも熱弁していました。

「右利きなのに、左で投げるストレートは絶品だし、変化球はエグい」と言うのです。

「脳は飽きる」投げ方を変える理由

どれほど長く、ダルビッシュが左で投げてきたかが窺えます。他にも、異なるメカニクスで投げることがあげられますが、彼は実際ブルペンや遠投でも異なる投げ方をすることがあるのです。