2024年、阿部慎之助新監督体制となった初めてのシーズンで、巨人は4年ぶりのリーグ優勝を果たした。

しかし、クライマックスシリーズではDeNAに破れ、日本シリーズへの出場はならなかった。

敗因はどこにあるのか。巨人のOBで、セ・パ両リーグ日本一を経験した名監督・広岡達朗さんが辛口総括をした著書『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』(朝日新聞出版)から一部抜粋・再編集して紹介する。

成功した大城・岸田・小林の正捕手争い

私が注目していた新生・阿部巨人はどうだったか。日替わりでなんとか前半戦をトップで折り返したが、4位・阪神までのゲーム差は3.5。首位争いに残っていたのは、巨人が強くなったというより、これまでが弱すぎたのだ。

新監督の阿部は目先の白星を追って苦労したようだが、私に言わせれば、巨人はこれまでに蓄積された戦力があれば今年もダントツの独走でなければおかしい。

巨人の本拠地・東京ドーム(画像:イメージ)
巨人の本拠地・東京ドーム(画像:イメージ)
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それでも、新監督になって変わったことがないわけではない。前年までの原辰徳監督は「打てる捕手」を求めて大城卓三ばかり使っていたが、今年は序盤からバッティングのいい岸田行倫と、インサイドワークと強肩のある小林誠司にもチャンスを与えて正捕手の座を競わせた。

私は原監督の時代から、「キャッチャーの役割は打つだけではない。一番大事なのは投手を育てる能力だ」と主張してきた。たしかに小林はもう11年目のベテランで、打率が2割に届いたのは2019年が最後。原時代最後の2023年は21試合出場で打率.125だった。