便は健康状態を反映する鏡のような存在だが、みんなは毎日チェックしているだろうか。色や形、臭いをしっかりと確認することで体の異変を早期に発見できるという。
普段と変わらない食生活をしているのに「便が細くなった」、健康診断でバリウムを飲んだわけでもないのに「便が白っぽい」などといった変化は、大きな病気のサインかもしれない。
便が発するSOSの種類と緊急度、さらに予防に欠かせない腸内環境の整え方について、函館稜北病院総合診療科の舛森悠医師に聞いた。
異変を訴える“危険な便”
「理想的な排便は1日1回。間が空いても3日に1回のペースです。見た目としては、バナナのように長くツルッとした茶色い1本の便、通称『バナナ便』が良いです」

便が硬いと肛門のトラブルや痔を発症し、そこから感染症を起こすこともある。
そして見逃してならないのは、「便の色が変わった」「細い便が続く」という変化だ。これらの症状は体が重大な変化を訴えている可能性が高い。
異変を訴える4つの便を見ていこう。
【黒い便】(タール便)
イカ墨を使った料理を食べたり、貧血の薬を飲むなど便が黒くなる可能性がある場合を除いて真っ黒い便が出た時は要注意だ。
食道、胃、十二指腸からの出血が疑われる最も危険な便といえる。
この3つの臓器は食べ物が通る前半の臓器で、ここで出血すると血液は胃酸と混ざり合うことで酸化して黒くなる。すぐに血を止めないと命の危険があるため、真っ黒いタール便が出た時は夜間であっても直ちに病院で診てもらおう。
検査としてはまず胃カメラで胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんがないかを調べる。

【白っぽい便】
何となく黄色っぽい、白みがかっている便。
便はそもそもなぜ茶色いのか。それは肝臓で作られている胆汁の色だ。胆汁は肝臓で作られた後、胆のうで貯留され、最終的には胆管という管を通って消化酵素として腸を流れていく。つまり、便が白っぽくなるということは胆汁が腸に流れていないことを意味する。
原因として考えられるのは主に3つ。
(1)肝臓の病気で胆汁が作られないケース
(2)胆のうに結石ができて(胆石)それが管に詰まって胆汁が通行止めになるケース
(3)胆管がん、十二指腸がん、すい臓がんによって通り道が狭くなり腸に胆汁が流れないケース
胆汁が腸に流れなくなると血液中に胆汁が流れてしまうため、尿が濃い色になったり、皮膚や白目が黄色くなる「黄疸」の症状を発症する。

【赤い便】(血便)
大腸の出血が疑われる。
食道や胃からの出血は胃酸と反応して黒くなるが、大腸で出血した場合は赤い便が出る。原因として一番怖いのは大腸がんだ。
がんは周囲の細胞から栄養を吸収するために新しい血管を次々と作って成長する。突貫工事で作られた新生血管は破れやすく、そこから出血することが多い。痔の可能性もあるが、大腸がんや腸炎を発症している深刻なケースもあるので医師に要相談だ。

【細い便】
大腸がんが疑われる。
大腸にがんができると便が通りづらくなり細くなってしまう。この症状は主に肛門に近いS字結腸や直腸にがんができた時に多く見られる。S字結腸や直腸は大腸がんが最もできやすい場所で要注意だ。
以前は太い便が出ていたのに最近は細い便が続く場合は、医師に相談しよう。