2024年11月に本島北部を襲った大雨では、国頭村で川が氾濫するなど北部3村を中心に大規模な被害が出た。こうした中で都市部に近い名護市では、これまでにない冠水や浸水が発生した地域がある。被害を教訓に住民同士の連携を強化していくとする稲嶺区の取り組みを取材した。

胸の高さまで水が

2024年11月、名護市の稲嶺地区で撮影された映像。
住宅前の道路を水がものすごい勢いで流れていてまるで川のようだ。

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稲嶺地区 平良和己 区長:
道路冠水は結構あります。床下浸水も一部ありますが、住宅の床上浸水はまずなかったです

稲嶺地区で12年間区長を務める平良和己さん。

2024年11月の北部大雨では地区内のおよそ14カ所が冠水し、10世帯が床上浸水、また車10台も廃車になるなどの被害が出たという。

名護市の住民:
(気づいたら一気に)お尻の辺まで水が。畳もみんな全滅

別の名護市の住民女性:
ここまでひどいことはめったにないです。(ひどいところで)胸くらいまで。避難所を見ようとしていたんですが、一時家の周りを水で囲まれてしまって出られなくて

名護市の北側に位置する稲嶺地区。
国道をまたぐとすぐ近くに海岸が広がる地域だが、なぜこれだけの冠水が発生したのか。
その理由の一つが、周辺道路との高低差。

稲嶺地区は新旧の国道に囲まれた地域で、国道よりも住宅地が低くなっており、水が集まりやすくなっている。

さらに、地区内には2カ所しか海につながる排水路がないことが、大規模な冠水の要因になっているのではないかと平良区長は考えている。

こちらは2024年11月の大雨で、最もひどい時間帯は腰のあたりまで水に浸かった、稲嶺地区の東側の路地である。

稲嶺地区 平良和己 区長:
この水もここに流れたらいいんですが、流れていないと認識しています。大きな用水路ではあるんですが、これは地区内の水をさばくためには活用されていないと思っています

かつて田んぼの水を引くために使われていたこの用水路は、地区内の排水路とはつながっていない。 

稲嶺地区 平良和己 区長:
こうきてわざわざ遠回りして海へ行くんです。この用水路がここの用水路のところへ来てくれたら、さばくんだけど、じつはそういうような機能がないんですよ

その結果、大雨で押し寄せた水は排水路に集中した。

災害を教訓に住民同士の連携を強化

これまでも稲嶺地区では、台風や大雨の時期にたびたび冠水が発生していたため、平良区長は数年前から排水路のふたを変更し、手づくりの枠を使ってつまりが起きないよう対策してきた。

稲嶺地区 平良和己 区長:
(10年くらい前から)あの枠を作ってはめるようにしました。あれでけっこう効果がありますよ。水がたまらないうちに流しているので、(水が)たまらずに済んでいます

今回の大雨も冠水を想定して、当日の未明から警戒の見まわりを行っていた平良区長。

この日は開始直後に大雨で中止になった「ツール・ド・おきなわ」があり、役員として国道の沿道に配置されていた平良区長らが地区に戻ってきたときには、すでに排水路のまわりは手が付けられない状況になっていた。

今回の被害を教訓に、稲嶺地区では住民同士の連携を強化していくとしている。

稲嶺地区 平良和己 区長:
自主防災組織を作ろうかと考えています。役割分担です。雨が降ったら近くの周辺を見る係とか、そういうのを決めようかと考えています。一番大事なのは情報ですよね。水がたまり始めたら、誰かが来てあの枠をはめれば解決しますので

大雨が予想される場合は、地域をあげて冠水を未然に防ぐとともに、名護市に対しても排水路の改善を働きかけている。

稲嶺地区 平良和己 区長:
(排水路どうしの)連携がうまくできなくて、急に直角に曲がったりとかがあるので、そういうのは工夫してもいいんじゃないかと思います。それも今回要請しています。つなげるものをつないで、スムーズに流れるようにしたいです

稲嶺地区の要請を受けて名護市は現在、調査に向けて排水路のつまりを取る清掃作業を行っており、2024年度中には調査業務を業者へ発注し、速やかな改善につなげたいとしている。

今回、想定を上回る水害となった稲嶺地区。台風への備えだけでなく、大雨に強い地域づくりを目指している。

(沖縄テレビ)

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