野菜の価格高騰や食料品の値上げなど、物価高が家計を直撃する昨今。格安スーパーで肉や魚、野菜などをまとめ買いして冷凍保存しているという家庭もあるだろう。
しかしせっかく手間をかけて冷凍したのに、解凍して調理したらおいしくない、という声も聞こえてくる。
「おいしく冷凍保存するにはコツがあるのです」。そう力説するのは、冷凍食品のプロであるニチレイフーズ広報部の笹嶺舞依子さん。
冷凍庫を日々の食事作りの味方につけるために、覚えておきたいポイントを聞いた。
家庭でもできる!急速冷凍のコツ
冷凍した食材をおいしく食べるには、まず冷凍の仕組みを知ることが役に立つ。「そもそも冷凍とは、食材の中の水分が凍った状態のことです」と笹嶺さん。
「食材の中の水分はマイナス1度からどんどん凍り始めます。ですが、一般的な家庭の冷凍庫の温度であるマイナス18度に到達するまでには時間がかかるのです。
その途中となるマイナス1度からマイナス5度の温度帯は『最大氷結晶生成温度帯』と呼ばれていて、氷の結晶がぐっと大きくなります。この氷の結晶が食材の繊維を壊してしまうため、食材がダメージを受けるわけです」

解凍後の肉や魚からドリップ(肉の内部から出る赤い血のような液体のこと)が出て旨みが流出したり、食感が変わったりして味を損ねるのは、そのダメージが原因だという。これは防ぎようがないのだろうか?
「冷凍の際、食材を素早く凍らせることで『最大氷結晶生成温度帯』を素早く通過させることができます。すると氷の結晶が大きくなるのを防ぎ、ダメージを軽く済ませることができます。
そのためには、まず食材をできるだけ薄く広げて冷凍用保存袋に入れること。さらに、熱伝導のよい金属製のトレイにのせて凍らせることです。急速冷凍室がある場合は、ぜひ利用してください」

冷凍食品メーカーの製品は、製造段階でマイナス30〜マイナス40度の環境で一気に凍らせているため、食品の組織の損傷を極力少なくできている。家庭ではメーカーと同等の環境を用意できないが、少しの工夫で冷凍スピードを上げることができる。